資本業務提携とは?流れやメリット・デメリットをわかりやすく解説
2022.3.03
2022.3.03
業務提携の1つの手法である「資本業務提携」。
市場環境が厳しいときなどにおいて、資本業務提携は有効な経営戦略の1つです。
本記事では、資本業務提携の概要、M&Aとの違い、資本業務提携の具体的なスキームや実際のプロセスとメリット・デメリット、資本業務提携契約書の書き方や注意点などを解説します。
Contents
一方の企業が提携先企業の株式を取得、あるいはそれぞれの企業が株式を交換して提携関係を構築する資本提携に対し、業務提携は、資本の交換は行わず会社間で業務面でのみ提携を行うことを指します。
これら資本提携と業務提携を同時に行うのが「資本業務提携」となります。
資本業務提携は以下の2つのケースに大別され、それぞれ特徴があります。
上場企業同士の資本業務提携で多いのは、相互に出資し株式(=議決権)を持ち合う関係となるケースです。
またお互いが出資をして、新たに合弁企業を設立するケースも少なくありません。
もちろん、どちらか1社が第三者割当増資を引き受けるケースもあります。
上場企業と未上場企業の資本業務提携では、ほとんどの場合、上場企業が第三者割当増資を引き受けるか、株式譲渡を受けて出資するパターンです。
その後、最終的に上場企業が過半数の株式を取得し、未上場企業が上場企業の子会社となることも少なくありません。
資本業務提携は、資本の移動を伴うため広義のM&Aとされています。
しかし厳密に言えば、目的という観点ではM&Aと資本業務提携の違いは明白です。
M&Aは、買収や合併などによって、対象企業の経営権や事業を取得します。
一方、資本業務提携では、その段階では必ずしも支配権の獲得を意図していないケースがほとんどです。
相手企業の経営権や事業の取得は目的にしておらず、双方の独立性やブランドなどを維持しながら、柔軟に連携することが目的となります。
また、資本業務提携では相手企業の経営権に関わらないため、M&Aよりもリスクが低いと言えます。
資本業務提携は、資本提携と業務提携が組み合わされたものです。
ここでは資本提携と業務提携に分けて、それぞれ代表的なスキームを紹介します。
資本提携の具体的なスキームは、以下の2つです。
株式譲渡 | 経営者、または会社が所有する自社株式を資本提携先に売却する。 株式取得側は議決権を得る。増資にはならず、株式売却者は課税を受ける。 |
第三者割当増資 | 新たに株式を発行し特定の第三者に割り当て、その引受け側(第三者)は出資して議決権を得る。会社は増資したことになる。 |
株式譲渡、第三者割当増資ともに、株式取得数が過半数を超える場合は対象企業の経営権を取得しますから、資本提携ではなくM&Aになります。
業務提携とは、企業間で協力体制を取り何らかの共同事業を行うことです。
代表的な業務提携には、以下のようなものがあります。
技術提携 | お互いのノウハウや開発技術を持ち合って共同開発や共同研究などを行う |
販売提携 | 販売網や販売組織、サービスや商品を提供し合い、共同で販売を行う |
生産提携 | 商品の製造工程の一部や生産活動の一部を提携先に委託する |
資本業務提携の主なメリットは、以下の4つです。
資本業務提携では、不足している経営資源の部分を相互に提供し合うことが行われます。
今まで足りていなかったピースを補完することによって、万全な事業体制を取れるのです。
自社単独では、その体制となるまで多くの時間を費やす必要があったでしょう。
時間の節約が可能になる点が、資本業務提携の大きなメリットの1つです。
事業の成長や業績向上を目指す上で「スピード」は必要不可欠です。
前項で述べたとおり、現時点で自社が所有していない、あるいは不足している経営資源の提供を受けられることは、資本業務提携の大きなメリットです。
特に、提携先しか所有していない特許のような経営資源の場合、資本業務提携をしなければおそらく自社単独では獲得できなかったでしょう。
一般に経営資源は4種に大別され、その具体例は以下のとおりです。
技術資源 | 製造技術、独自技術ノウハウ、特許技術、実用新案など |
生産資源 | 工場、施設、設備、機械類、製造システムなど |
販売資源 | 倉庫、営業所、店舗、流通網、ブランド力など |
人材資源 | 有資格者、技術者、研究者、営業担当者、販売員、マネージャーなど |
前述のとおり、資本業務提携は提携先の経営権には関与しません。
経営面の独立性を維持しながら、自社が持っていなかった他社の経営資源を活用できるのは、大きな魅力です。
資本業務提携での協力関係・アライアンスによってシナジー効果(相乗効果)が生まれ、企業価値向上や競争力強化につながります。
資本業務提携で期待できる具体的なシナジー効果は、主に以下のとおりです。
事業シナジー | コスト削減、スケールメリット、人材獲得、売上増 |
組織シナジー | 生産性向上 |
研究開発シナジー | 技術やノウハウの融合による新技術・新製品の開発 |
財務シナジー | 資金調達力の強化 |
資本業務提携には、以下のようなデメリットが生じる可能性があります。
元来は経営権取得が目的ではない資本業務提携ですが、一定数の出資をすれば議決権を持ちます。
株主として会社の内情もよく知ることとなるため、資本業務提携の進捗状況について意見が出てくるのは避けられないでしょう。
つまり、経営権を失わないとはいえ、一定数の議決権を持った株主として、提携先を無視はできません。
特に資本業務提携の進捗状況が良くない場合などは、何らかの介入があることが考えられます。
資本提携を伴わない単なる業務提携であれば、関係解消は契約を終了するだけなので比較的、容易です。
しかし、資本提携で資本関係があると、契約の終了のように簡単には行えません。
特に、資本業務提携で合弁会社を設立した場合などは、関係の解消は非常に困難です。
このように、解消したくてもすぐに解消手続きが取れないという点は、資本業務提携のデメリットといえます。
資本業務提携を打ち切ることになった場合、協力関係の解消に伴って、提携先が出資した分の株式買取を求めるのはほぼ必至です。
自社としても、提携先でなくなる相手に株式を持たれているのは、良い気分ではないでしょう。
ただし株式の買取では、時価よりも高額を要求されることも多く、価額交渉に労力を取られます。
また、買取資金も工面しなければならず、資本業務提携解消の場面ではこのようなデメリットがあります。
ここでは、実際に資本業務提携を行う場合の一般的なプロセスを紹介します。
STEP.1 パートナー企業を探す
STEP.2 両社の資本業務提携のゴールを確認する
STEP.3 パートナーとの交渉開始
STEP.4 契約を締結する
経営戦略として資本業務提携を目指す場合、パートナー企業の存在が必要です。
そこで早速、パートナー企業探しに入ります。ただし、闇雲に探すわけではありません。資本業務提携を目指すことを決めた際に、自社の分析を行っているはずです。
不足している経営資源は何か、どんな特徴を持った企業が提携先としてふさわしいのかなど、条件を明確にした上でパートナー企業を探さないと、無駄に時間を費やすだけなので注意しましょう。
パートナー企業候補との交渉前に、契約条件の希望内容(目標)を明確にします。
条件の詳細は、それぞれのケースで異なりますが、一般的に欠かせない条件内容は以下のようなものです。
資本業務提携を成就させるには、交渉による条件の合意が必要です。
ここで、希望条件のすり合わせができないと交渉はまとまりません。
ある程度の妥協が必要な場合もありますが、妥協し過ぎて本来の目的が達成できない条件にならないようにすることも肝要です。
資本業務提携は広義のM&Aともされていますから、場合によっては当事者のみでの交渉に固執せず、M&A仲介会社などに交渉を仲介してもらうことも検討しましょう。
パートナー企業との交渉がまとまれば、資本業務提携契約の締結です。
M&Aのように親子会社関係になることと資本業務提携は異なりますから、契約書の内容は細部により注意が必要になります。
経営的に独立している企業間の契約では、どちらかが不利を被ったりトラブルが生じやすかったりする内容を含ませてはいけません。
弁護士など専門家の手により契約書を作成し、その内容は十分にチェックを行ってから締結しましょう。
なお、資本業務提携契約書の重要項目や注意点は次章に記述します。
資本業務提携を実施する場合、必ず資本業務提携契約書を締結します。
資本業務提携には会社法での規定がないため、その分、慎重に契約書の内容を検討することが必要です。
ここでは資本業務提携契約書に欠かせない以下の条項と、その注意点を確認しましょう。
他のさまざまな契約書と同様に、資本業務提携を行う目的を明確にするため、その定義を第1項に記載します。
契約書の解釈に疑義などが生じた場合に、この「目的」の条項があることで資本業務提携契約書の指針の役目を果たすのです。
また、この条項がないと、以降に記載する他の条項の意味合いが曖昧になるのを防ぐ役割もあります。
契約を履行する時期が明示されていなければ、資本業務提携を実施できません。
いつから資本業務提携を開始するのかは必ず記載します。
また、資本業務提携の内容・条件によっては、資本業務提携を終了する時期を区切ることもあるでしょう。
そのようなケースでは、資本業務提携を終了する時期も明記します。
ここに挙げている全ての条項が重要なものですが、資本業務提携契約書の根幹となるのが「資本業務提携内容」の記載です。
具体的には、資本業務提携の合意内容に基づき、以下のような項目が盛り込まれます。
資本業務提携の結果、共同事業によって研究・開発・製造・生産が行われ商品として販売されます。
その成果物の所有権、またそれに伴う知的財産権は、どう帰属するのか契約書で定めておかないと、あとで大きなトラブルになります。
前項の「契約の内容」に含まれるケースもあるかもしれませんが、別の条項として切り出して記載した方がわかりやすいでしょう。
資本業務提携で協力関係となれば、お互いに相手企業の多くの秘密情報に触れることになります。
秘密情報を含む経営資源は、あくまでも資本業務提携契約に基づき提供されているものであって、自社が入手・獲得したわけではありません。
したがって、それらの秘密情報の取り扱いには十分な注意が必要です。
そのことを明確にするため、「秘密保持義務の範囲」という条項を設け、内容を明記します。
秘密保持義務に違反した場合の罰則(損害請求など)も合わせて記載されるのが常です。
契約書に書かれていない事象や、現段階で予見できないトラブルが万が一、発生した場合に備え、「協議事項」として、トラブル解決のために当事者間で協議を行うことや、協議方法を記しておくのはとても有用です。
忘れずに記載しましょう。
資本業務提携で用いられる株式譲渡や第三者割当増資はM&Aのスキームです。
したがって、資本業務提携の交渉や手続きを円滑に進めて実現するには、当事者間で行うよりも専門家のサポートを受けるのが得策と言えるでしょう。
M&A Stationでは、M&Aに関する豊富な知識と経験により、さまざまなノウハウを有するアドバイザーが交渉や各種手続きをサポートします。
さらに国の認定を受けた支援機関(認定経営革新等支援機関)である税理士法人Bricks&UKでは、交渉や手続き面のサポートだけでなく、買収資金の調達などにもお力添えできます。
資本業務提携やM&Aをご検討されている場合には、いつでもお気軽にお問い合わせください。
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