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労務の視点から見る医療業界のM&A

コロナ禍によって大きな影響を受けている医療業界も、近年はM&Aの活用が進んでいる業界のひとつと言えます。
病院・クリニック・医療法人など医療業界のM&Aを実施する場合、一般企業のM&Aとは異なる手続きを取る必要があり注意しなければなりません。

また、M&Aのスキーム面だけでなく、医療業界には一般企業とは異なる特徴もあります。特に労務の観点から医療業界を見るとその特質さは明らかです。

本記事では、医療業界のM&Aにあたって労務にスポットを当て、その注意点を解説します。

医療業界の特徴・労務管理との関係性

労務の視点から見る医療業界のM&A

医療業界の特徴としてあるのが、1つの病院・クリニックの中にさまざまな職種が混在することです。
それらは大別すると医療系と事務系に分けられますが、具体的には以下のような職種があります。

  • 医療系:医師、看護師、理学療法士、薬剤師、放射線技師、栄養士など
  • 事務系:経営企画、情報管理、人事、医事、経理、総務、庶務など

医療業界は患者の生命に関わる仕事であるため、設立・人員配置数・診療報酬・設備・施設などに規制が存在します。
医療業界の労務管理では、各種労働法の知識が必要である一方、人員配置や診療報酬などの規定も知っていなければなりません。
一般企業の労務管理と比べて、医療業界の労務管理は対応が難しいといえるでしょう。

また、医療従事者には応召義務(正当な理由なく患者の診療を断れない)があるため、夜勤・宿直を含めた24時間体制です。
医療業界では、単なる残業だけでなく始業前残業も発生しやすいため、長時間労働という労務管理の課題も抱えています。

医療業界で起こりがちな法令違反の代表例

労務の視点から見る医療業界のM&A

前述のとおり、医療業界では長時間労働という労務管理上の課題があり、ややもすると、それに関連して法令違反を犯してしまうケースがあり注意が必要です。

ここでは、医療業界で起こりがちな法令違反の代表例を確認しましょう。

1.未払残業代

長時間労働になりがちな医療業界では、当然、残業が発生します。
労働基準法の定めにより、従業員が1日8時間、1週間40時間を超える仕事を行った場合、病院・クリニックは残業代を支払わなくてはいけません。

しかし、医療業界の場合、早番・遅番のシフト勤務や夜勤・宿直を含む3交代制勤務などさまざまな勤務形態があるため、労働時間勤務が複雑で、残業代や深夜割増などが正しく支払われていないケースがあります。

2.36協定・残業の上限違反

従業員に残業をさせるには、労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)を締結し、所轄の労働基準監督署長へ届け出なければなりません。

労働基準法が認めている残業時間は以下の範囲です。

  • 通常:月45時間・年360時間
  • 臨時的特別事情:月100時間(複数月平均80時間、月45時間以上は年間6カ月以内)・年720時間

しかし医療業界ではその構造上、36協定や労働基準法の上限を超えてしまうケースも少なくありません。

3.宿直・日直許可違反

断続的な宿直・日直勤務は、労働基準監督署に申請し許可を受けることで、該当する業務を行った時間は労働時間にカウントされません(深夜割増は除外されない)

この許可を得ずに宿直・日直勤務をさせた場合、全てが労働時間と見なされ、残業時間が膨大な数字になります。
これが結果的に、未払残業代や36協定違反につながってしまうケースが多く見られます。

働き方改革の影響が大

労務の視点から見る医療業界のM&A

2021(令和3)年5月、医師の働き方改革を実現すべく「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」が公布されました。

2024(令和6)年4月から順次施行される予定ですが、注目すべきポイントは以下の3点です。

  • 医師の時間外労働時間に上限規制
  • 追加的健康確保措置(医師の健康確保措置)
  • タスクシフト・タスクシェア(医師の一部業務を他の医療従事者に移管し負担軽減)

医師の時間外労働時間は、一般職とは異なる上限規制になっています。
また、医療機関を複数の水準で区分けし、その区分けごとに上限時間が異なるなど運用が単純ではありません。

タスクシフト・タスクシェアによって従来の職種の役割も変わるため、新たな労務管理も求められます。
したがって、病院・クリニックの運営側は、新たな法令をよく理解して取り組まないと労務管理に支障をきたすおそれもあります。

今後、医療業界でM&Aを実施する際には、売り手側の運営状況をデューデリジェンス(買収監査)でよく見極め、M&A後のPMI(Post Merger Integration=経営統合プロセス)を着実に実施することが肝要です。
その際には、デューデリジェンスとPMI計画策定に力となる専門家の起用が欠かせません。

Bricks&UKは、グループ全体で総合的なデューデリジェンスに対応しつつ、PMI計画策定もサポートできる専門家集団です。
デューデリジェンスやPMIに関しては、ぜひBricks&UKにご相談ください。

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M&Aを成功させるための要点のひとつに「デューデリジェンス」が挙げられます。
買収対象企業の分析・評価のために実行されるもので、ここでリスクを見落としてしまうと後々取り返しがつかない危険性があります。

ただ、調査項目は多岐に渡り高度な専門知識が必要とされ、いざ必要な場面でどこに依頼すればいいか分からない方も少なくないでしょう。
多くのM&A仲介会社の業務範囲は、文字どおり「仲介」まで。デューデリジェンスに関しては、改めて依頼先を探さなければいけません。

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医療業界ならではの労務問題とその対応策

労務の視点から見る医療業界のM&A

ここでは、医療業界特有の労務管理上の問題点と、その対応策を掲示します。

長時間労働・不適切な労働時間の是正

医療業界の医師、看護師などの専門職の場合、職業上の特性のため長時間労働になりがちであり、また、多くのケースでそれがサービス残業という形で行われてきました。

これを是正していくためには、客観的に労働時間を把握できるシステムの導入が不可欠です。
それぞれの医療機関に適したシステムを選択し、勤怠管理を正確に行う必要があります。

そのうえで、医師や看護師本人たちにも、長時間労働を行わない自覚を持たせる取り組みも欠かせません。

就業規則などの規程類の整備

医療機関の中には、他の医療機関で使われている就業規則を流用しているケースがあります。
自院の実態に合っていない就業規則だった場合、正しい労務管理は行えません。

また、各種労働法が改正された場合、それに合わせて就業規則も改定しなければなりません。

しかし、その対応ができておらず、導入時の就業規則をそのまま使っている医療機関も少なからずあります。
就業規則などの規定類を整備することは、正しい労務管理を行っていくための第一歩です。

メンタルヘルスへの対応

医療業界においても、職員のメンタルヘルスへの対応は他の業界と同様に大切です。

厚生労働省では、メンタルヘルス対策として以下の3点を掲げています。

  • 一次予防:仕事による健康障害防止
  • 二次予防:早期発見、早期対処
  • 三次予防:再発・再燃防止、職場復帰支援

厚生労働省からは、労働安全衛生法に基づいた「労働者の心の健康の保持増進のための指針」も発表されています。

具体的な対応方法は、その内容に則して行うことが肝要です。

まとめ~医療業界でのPMIでもBricks&UKはお役に立ちます!~

労務の視点から見る医療業界のM&A

医師の働き方改革が推進されていく医療業界では、労務管理の適正化も重要な課題です。
そのような医療業界でM&Aを実施するには、デューデリジェンスで労務面のリスクや問題も把握し、PMI計画策定に落とし込む必要があります。

昨今、M&A仲介会社は増えてきましたが、総合的にデューデリジェンスを担当できて、なおかつPMIのサポートもできる仲介会社は多くありません。

当サイトを運営する「税理士法人Bricks&UK」は、M&A仲介、デューデリジェンス、PMIの全てを任せられる数少ない専門家の1つです。
Bricks&UKグループには、税理士、司法書士、社会保険労務士などが数多く在籍しており、M&A仲介業務とともに、さまざまな分野のデューデリジェンスを着実に行ってPMIを万全にサポートできる体制です。

医療業界のM&Aを検討される際には、総合的なサポートを提供できるBricks&UKへご依頼ください。随時、無料相談をお受けしております。

社会保険労務士の額賀

この記事の監修M&A労務アドバイザー 額賀 康宏

社会保険労務士事務所Bricks&UKに所属する社会保険労務士。
M&A Stationでは労務関連のスペシャリストとして、統合プロセスでの労務トラブル回避などに有益なアドバイスを提供している。

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近年、M&Aが活発化してきたことに伴い、M&A仲介会社の数も大きく増大しました。
しかしながら、多くのM&A仲介会社の業務範囲は、文字どおり「仲介」までであり、M&A成立後のPMIに対するサポートサービスを提供している会社は少ないのが実情です。

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