【M&A最新動向】建設業界のM&A動向・業界の課題など
2022.5.10
2022.5.10
建設業は欠かせない産業である一方、人手不足や従業員・経営者の高齢化、事業承継などの経営課題も指摘されています。
それらの課題克服のための経営戦略として、近年、M&Aが盛んに行われるようになってきています。
本記事では、建設業界の概要・市場規模・課題、建設業界の最新M&A動向・M&Aのメリット・M&Aを成功させるポイントについて、最新事例の紹介も交えて解説します。
Contents
まずは、建設業界の概要を確認します。
建設業は、大別すると「建築業」と「土木業」に分けられますが、建設業法では以下の29業種に細分化し定めています。
建設業界には、業界ならではの以下のような特徴があります。
一般社団法人日本建設業連合会の「建設業ハンドブック2021」によると、建設業界の主要指標は以下のように推移しています。
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | |
建設投資額 | 61兆8,721憶円 | 62兆4,900億円 | 60兆9,000億円 |
許可業者数 | 46万8,311業者 | 47万2,473業者 | 47万3,952業者 |
就業者数 | 503万人 | 499万人 | 492万人 |
東京オリンピックに関連した建設需要で、建設投資額は2019(平成31・令和元)年度まで順調に伸びていました。
しかし、新型コロナウィルス感染拡大問題の影響で、2020(令和2)年度は過去4年間で最低額となっています。
また、コロナ禍の中でも許可業者数は伸びているにも関わらず、従業者数が減少を続けているのは気になるところです。
建設業界の大きな課題は、「従業員・経営者の高齢化」と「慢性的な人手不足」です。
そこで、業界として労働者の待遇改善に取り組み、賃金については2018(平成30)年以降、全産業平均よりも高額を支給しています(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」より)。
しかし、労働時間については、全産業平均を年間で338時間も上回っている状態です(厚生労働省「毎月勤労統計調査」より)。
これを嫌って特に若年層の入職者が少なく、建設業界の現場では労働者の高齢化が進んでしまっています。
従来、建設業界は業界独特の構造的な特徴によりM&Aに消極的でした。
しかし、近年は中堅・大手建設会社が買い手となるM&Aが増加傾向にあります。
建設業界のM&Aでは、特に以下の点が特徴です。
異業種の中でも建設業界の関連業種と言える、不動産会社やハウスメーカーが買い手となるM&Aが盛んです。
これは、住居や建物の建築を自社グループ内で行う目的で、ゼネコンを買収しています。
不動産会社やハウスメーカーとしては、事業の多角化が果たせるとともに、従来は外注としていたものを内製化できるため、コストダウンなどのシナジー効果も得ているのです。
日本は少子化による人口減少が続いています。
建設業界に限らず、ほとんどの産業において今後の市場規模縮小は避けられないでしょう。
そこで、建設業においても他の産業と同様に、海外市場を目指したM&Aが大手建設会社を中心に行われています。
海外の新興国と呼ばれる国々では、インフラの整備・工事などがこれから盛んに行われていく見込みです。
その市場に進出することで、国内市場だけでは達成できない業績を目指しています。
帝国データバンクの「全国企業『後継者不在率』動向調査(2021年)」によると、日本で建設業を行う中小企業では、67.4%が後継者不在です。
全業種平均(61.5%)よりも高い数値であり、多くの建設会社が廃業危機にあります。
近年は、これを解決する手段として、事業承継を目的としたM&Aも行われるようになってきました。
会社を売却することで、その買い手が後継者(新たな経営者)となって事業承継が実現し、会社は存続するのです。
ここでは、実際に建設業界の会社が関わった最新のM&A事例を紹介します。
2022(令和4)年3月、ミライト・ホールディングスは、西武建設の株式95%を親会社の西武鉄道から取得し子会社化しました。
取得価額は、約620億円です(アドバイザリー費用等含む)。
ミライト・ホールディングスは、電気通信工事、電気工事、土木工事、建築工事などを行うグループの持株会社として子会社の経営管理を行っています。
西武建設は、土木、建築、その他建設工事全般の総合建設事業を行う企業です。
ミライト・ホールディングスとしては、このM&Aによって、シナジー効果を得てグループ各社の業績が拡大し、企業価値向上が図れると判断しました。
2022(令和4)年3月、清水建設は日本道路にTOBを実施し、事前所有分も含め日本道路の株式50.10%を取得し子会社化しました。TOBに要した費用は、220億200万円です。
清水建設は、各種建設事業を中心に不動産開発事業、エンジニアリング事業、ライフサイクル・バリュエーション事業、フロンティア事業を行っています。
日本道路は、道路建設とその他の建築・土木事業を中心に不動産開発事業やエンジニアリング事業などを行っている企業です。
清水建設としては、今後、日本道路が業績を向上させていくにはグループ化が得策と判断しTOBを実施しています。
また、現状ではこれ以上の株の買い増しはせず、日本道路の上場も維持する方針です。
2022(令和4)年2月、鹿島建設の連結子会社でシンガポールのカジマ・デベロップメント・PTE・リミテッドは、同じくシンガポールのセントラル・キャピタル・ホールディングス・PTE・リミテッド(以下セントラル)の全株式を取得し完全子会社化しました。取得価額は約136億円です。
資本金額の関係上、セントラルは鹿島建設の特定子会社になります。
鹿島建設としては、セントラルがシンガポールに保有するオフィスビルの価値に着目し、今後の同地での開発事業に活かすため子会社化を決めました。
建設業界でM&Aを実施した場合に得られるメリットについて、買い手・売り手それぞれの観点で確認します。
建設業界でのM&Aで、買い手が得られるメリットは以下のとおりです。
売り手企業に在籍する経験者や有資格者など優秀な人材を獲得できます。
同業社の買収で事業規模が拡大し、同一エリア企業なら市場シェアが上がり、異なるエリアの企業なら営業エリアを拡張できます。
資材の一括仕入れや専用車両の共有が可能となり、コスト削減効果が得られます。
建設業界でのM&Aで、売り手が得られるメリットは以下のとおりです。
会社売却により、買い手が後継者(新たな経営者)となって事業承継が実現します。
大手企業の傘下になれば、親会社の資本力に支えられた経営が可能になり、財務面の不安定さは解消されます。
会社の売却対価は相応の金額であり、新規事業の立ち上げやゆとりある老後生活の実現などが可能な売却益が得られます。
建設業界でのM&Aを成功させるために注意したいポイントを、買い手・売り手に分けて説明します。
建設業界のM&Aでは、許認可の引き継ぎなど建設業界ならではの知見が欠かせません。
M&A Stationでは、建設業界のM&Aに関する豊富な知識と経験により、さまざまなノウハウを有するアドバイザーが、M&Aの交渉・各種手続きをサポートします。
国の認定を受けた支援機関(認定経営革新等支援機関)である「税理士法人Bricks&UK」が、M&Aの交渉・手続き面のサポートだけでなく、資金調達サポートや事業計画書の無料診断などにもお力添えしております。
建設業界のM&Aをご検討されている場合には、いつでもお気軽にお問い合わせください。
M&A Stationでは、随時、無料相談をお受けしています。
この記事の監修M&Aシニアアドバイザー 齊藤 宏介
税理士法人Bricks&UKにて、税務・会計の豊富な経験から事業者の良きパートナーとして活躍。
M&A Stationではアドバイザーの中心的存在として、様々な業種の会社へのM&Aアドバイザリー業務を取り仕切る。
M&A Stationを運営する「税理士法人Bricks&UK」は、顧問契約数2,500社以上、資金繰りをはじめ経営に関するコンサルティングを得意分野とする総合事務所です。
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