労務の視点から見る調剤薬局業界のM&A
2023.2.09
2023.2.09
調剤薬局業界は他の業界と比べて、個人経営の店舗が多いことが特徴。そのような個人経営の薬局では事業承継への取り組みが必須であり、その手段としてM&Aも多く用いられています。
しかしながら、個人経営の薬局を一般の企業と比較した場合、労務管理が行き届いていないケースも多く、M&A後、買収側が労務の立て直しに迫られることも少なくありません。
そこで本記事では、調剤薬局業界の労務に着目し、問題点やその対策などを紹介します。
Contents
調剤薬局業界は、関連業界であるドラッグストア業界と比べると大手企業のシェアが高くないのが1つの特徴です。
実際のところ、大手10社の合計シェアは約15%程度でしかなく、それだけ小規模経営による薬局・店舗が多いということになります。
調剤薬局の主要な売上の源は「処方箋」です。
そのため、クリニックの診察を受けた患者がすぐに立ち寄れるように、クリニックの目の前や近所(門前)に店舗を構える、いわゆる「門前薬局」がほとんどとなっています。
門前薬局の特性として、店舗の営業時間・営業日は当該クリニックのそれに準ずるなど、クリニックの影響下に置かれてしまうことです。
調剤薬局は、国家資格である薬剤師が在籍していなければ開業できません。
1人の薬剤師が1日に受け付けられる処方箋は40枚(2022年12月現在)です。
調剤薬局の売上増を図るには、薬剤師を増やさねばなりません。
しかし、現状は薬剤師不足です。薬剤師が事務員の仕事を行う調剤薬局も多く、さらに患者からの電話に24時間対応も求められるなど、薬剤師の業務負担が大きくなっています。
労務管理の行き届いていない個人経営の調剤薬局などで人手不足状態の場合、1人の薬剤師の業務に負担がかかってしまいがちです。
その結果、以下のような法令違反を起こしてしまっている調剤薬局もあるでしょう。
調剤薬局に勤務する薬剤師が1日8時間、1週間40時間を超える仕事を行った場合、薬局側は残業代を支払うのが労働基準法の定めです。
薬剤師が深夜や休日に業務を行った場合は、金額が割増となりますが、人手不足の調剤薬局業界の場合、多くの薬局で残業が発生しているはずです。
また、薬剤師には患者への24時間電話対応などが求められていることもあり、深夜や休日の業務も発生します。
しかし、労務管理が行き届いていない調剤薬局では、それらがきちんと計算して支払われていないケースもあるのです。
「労務管理の行き届かなさ=労働時間管理の曖昧さ」となっている調剤薬局が多いのが現状です。
薬局の閉局時間間際に患者が立て続けに来た場合などは、在庫確認・書類整理などを行う時間がずれ込みます。
人手不足の調剤薬局の場合、休憩時間であっても患者が混み合えば対応せざるを得ません。
本来、労働基準法で定められている休憩とは、全く業務から切り離された状態のことです。
このように残業がサービス残業化していたり、休憩時間中も業務を行っていたりなど、労働時間の管理が厳密に行われていないケースがあります。
調剤薬局の薬剤師が行う本来の主な業務は以下のとおりです。
昨今、医療機関の従事者に対する働き方改革が推進されることになりました。
その結果、医師が行っている業務の一部が薬剤師に移管され、薬剤師の業務負担が増えます。
薬局によっては事務作業なども行う薬剤師にとって、この負担増は耐えかねるものかもしれません。
特にM&Aで調剤薬局を買収し、その後の薬局経営を考えるとき、医薬品の専門家である薬剤師が本来の業務に集中できるよう、薬局内での役割の見直しが課題となります。
課題の解決手段としてポイントとなるのは、M&A後のPMI(Post Merger Integration=経営統合プロセス)です。
有効なPMIを実施するためには、当該薬局の労務管理や薬剤師の業務内容をデューデリジェンス(買収監査)で洗い出し、実態に則したPMI計画策定が必要になります。
Bricks&UKでは、それら一連のデューデリジェンス~PMI計画策定の専門家としてM&A仲介業務に携わっております。
調剤薬局の買収をご検討の際には、ぜひご活用ください。
ここでは、調剤薬局業界特有の労務管理上の問題点と、その対応策を紹介します。
調剤薬局業界の薬剤師の場合、職業上の特性のため長時間労働になりがちであり、また、多くのケースでそれがサービス残業という形で行われてきました。
これを是正していくためには、客観的に労働時間を把握できるシステムの導入が欠かせません。
それぞれの調剤薬局に適したシステムを選択し、勤怠管理を正確に行う必要があります。合わせて業務終了時間、休憩時間などを明確にすることも肝要です。
適正な労務管理を実施するには、就業規則をはじめとする社内規定類がきちんと整備されていなければなりません。
薬局開業時に導入した就業規則などがあったとしても、労働関係法は煩雑に改正がなされています。
改正された法令内容に合わせて、就業規則などもその都度、改定しなければ労務管理に支障が生じるでしょう。
就業規則などの社内規程を改定した場合、雇用契約書の文言などの修正が必要な場合もあるのでその点も注意が必要です。
調剤薬局事業を企業グループで行っている場合、ブランド別あるいはエリア別などで個別の法人組織形態になっているケースがあります。
その場合、薬剤師などの従業員をグループ内の別法人の薬局に配属させる際の扱いに注意が必要です。
一体経営されている企業グループの感覚としては、薬剤師の配置換えという扱いにしがちですが、それは正しくありません。
別法人の薬局に異動するのであれば、「転籍・出向」が法律上の解釈となります。
法令どおりの扱いとするのか、グループ内の特例として異動扱いとするのか、就業規則や雇用契約書などによる根拠付けをしておくか、あるいは各薬剤師の個別同意を得るのか、方針を定めておかねばなりません。
M&Aを検討するにあたっては、買収対象企業の労務面のリスクを、デューデリジェンスで徹底して調査する必要があります。
一般的な労務デューデリジェンスでの主な調査項目は以下のとおりです。
買収対象企業の適正な企業価値を計るためにも、労務デューデリジェンスをはじめとしたデューデリジェンスの実施は欠かせません。
そしてデューデリジェンス成功のカギは「信頼できる依頼先に出会えるか」に掛かっていると言っても過言ではありません。
M&Aを成功させるための要点のひとつに「デューデリジェンス」が挙げられます。
買収対象企業の分析・評価のために実行されるもので、ここでリスクを見落としてしまうと後々取り返しがつかない危険性があります。
ただ、調査項目は多岐に渡り高度な専門知識が必要とされ、いざ必要な場面でどこに依頼すればいいか分からない方も少なくないでしょう。
多くのM&A仲介会社の業務範囲は、文字どおり「仲介」まで。デューデリジェンスに関しては、改めて依頼先を探さなければいけません。
M&A Stationを運営する「税理士法人Bricks&UK」では、グループとして税理士、社会保険労務士、司法書士、M&Aアドバイザーが在籍しており、本来であれば個別に依頼が必要なデューデリジェンスもワンストップ対応が可能です。
デューデリジェンスもM&A Stationにおまかせください!
薬剤師不足および個人経営の多い調剤薬局業界のM&Aを実施する場合、買収後の労務管理の適正化も重要な課題です。
具体的な対応としては、デューデリジェンスで労務面のリスクや問題も把握し、PMI計画策定に落とし込む必要があります。
昨今、M&A仲介会社は増えてきましたが、総合的にデューデリジェンスを担当できて、なおかつPMIのサポートもできる仲介会社は多くありません。
「税理士法人Bricks&UK」は、M&A仲介、デューデリジェンス、PMIの全てを一貫して任せられる総合事務所。Bricks&UKグループには、公認会計士、税理士、司法書士、社会保険労務士などが数多く在籍しています。
M&A仲介業務とともに、さまざまな分野のデューデリジェンスを着実に行ってPMIを万全にサポートできる体制です。
調剤薬局業界のM&Aを検討される際には、総合的なサポートを提供できるBricks&UKへご依頼ください。随時、無料相談をお受けしております。
この記事の監修M&A労務アドバイザー 額賀 康宏
社会保険労務士事務所Bricks&UKに所属する社会保険労務士。
M&A Stationでは労務関連のスペシャリストとして、統合プロセスでの労務トラブル回避などに有益なアドバイスを提供している。
近年、M&Aが活発化してきたことに伴い、M&A仲介会社の数も大きく増大しました。
しかしながら、多くのM&A仲介会社の業務範囲は、文字どおり「仲介」までであり、M&A成立後のPMIに対するサポートサービスを提供している会社は少ないのが実情です。
M&A Stationを運営する「税理士法人Bricks&UK」では、グループとして税理士、社会保険労務士、司法書士、M&Aアドバイザーが在籍しています。
買収後の難問であるPMIについても、それら各専門家スタッフによる総力を挙げたお力添えが可能です。
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