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M&Aにおける労働条件承継の注意点~移転はスキームによって異なる~

従業員の権利義務の移転はM&Aの重要な検討事項のひとつ。
移転がスムーズにいかないと、大量の離職や業務の非効率化が起こる可能性があります。

結果として、「狙ったシナジー効果が得られなかった」「事業を拡大できなかった」など、M&Aが失敗に終わってしまう場合もあるでしょう。

本記事では、M&Aにおける従業員の権利義務の移転について、労務のプロフェッショナルである社会保険労務士が専門家の知見から詳しく説明します。
トラブルを回避するための方法まで解説しますので、参考にしてください。

従業員の権利義務の移転の種類

M&Aでは、スキームによって、従業員の権利義務の移転方法が異なります。

以下でスキームごとに説明します。

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合併の場合

合併とは、2つ以上の会社が合わさって1つの会社になることを指します。

合併には、既存の会社の1つが存続会社(合併後も事業活動を続ける会社)になる「吸収合併」と、新しく会社を新設して、新設した会社が存続会社になる「新設合併」があります。

合併の場合、権利義務が全て承継される「包括承継」になりますので、従業員の雇用契約や労働条件は、基本的に全て存続会社に移転します。従業員の合意も必要としません。

事業譲渡の場合

事業譲渡とは会社の事業の一部、もしくは全部を売買するものです。

本来、事業譲渡の契約自体には従業員の合意は必要ありません。仮に従業員全員が反対していても、事業譲渡を実行することは可能です。
しかし、従業員の移転には個別で合意が必要となります。

民法第625条1項では、「使用者は労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことはできない」と定められています。

事業譲渡では、法律に基づいて、従業員の権利義務の移転が行われます。
なお、事業譲渡の場合、従業員の雇用契約はそのまま承継されません。移った従業員と、改めて雇用契約を結ぶ必要がある点にも注意してください。

会社分割の場合

会社分割とは事業に関する権利義務の一部、もしくは全部をほかの会社に承継させるM&Aのスキームです。
既存の会社に事業を承継させる「吸収分割」と、新たに会社を設立する「新設分割」があります。

事業譲渡と非常によく似ていますが、さまざまな違いがあります。
例えば、事業譲渡では会社の資産や負債、契約をそれぞれ個別に承継しなければなりません。
一方、会社分割は全てを包括的に承継させることが可能です。

会社分割の場合、事業のどの範囲を承継するかは、吸収分割の場合は分割契約で、新設分割の場合は分割計画によって定めます。

分割契約や分割計画には、承継する部門に「主として従事する者(承継される事業にもっぱら携わっている人)」の範囲も定められます。
主として従事する者は、承継される事業と一緒に、権利義務を移転するのが一般的です。

移転の際に起こり得る問題点

M&Aにおける労働条件承継の注意点~移転はスキームによって異なる~

従業員の権利義務の移転では、さまざまな問題が起こり得ます。
移転の際に想定される、起こりやすい問題を紹介します。

合併の場合

まずは、包括承継する合併の場合に起こり得る問題について見ていきましょう。

合併では、事前改善点を実施できなかった場合に、問題が起こるケースが多く、なかには合併する際に、消滅する会社の労働契約に改善が必要なケースもあります。

未払い残業問題や、長時間の労働があげられるでしょう。
合併後に改善されないとなると、当然、企業価値は下がってしまいます。
仮にM&Aをきっかけに上場しようとした場合にも、法令遵守がされていないことを理由に、実現できなくなる可能性が考えられます。

事業譲渡の場合

事業譲渡の場合、従業員の権利義務の移転には、個別で合意が必要だと前述しました。
しかし、実は従業員が合意を強いられ、強制的に移転させられる場合も少なくありません。

強制的に権利義務を移転した場合、従業員の反発があることが予想されます。
新しい職場で本来の実力を発揮するのが難しくなりますし、効率的な業務が行えない可能性も出てくるでしょう。

また反対に、事業譲渡で承継される事業に携わっている人を排除したことで、トラブルになるケースもあります。

会社分割の場合

分割契約や分割計画では、主として従事する者の範囲を定めます。

承継される事業に専門的に携わっていて、本来なら主として従事する者の範囲であるにも関わらず、外してしまう場合も考えられます。

不当な動機や目的で外した場合、権利濫用として「不当行為」とみなされます。

従業員の権利義務の移転における対策

M&Aにおける労働条件承継の注意点~移転はスキームによって異なる~

ここまで、従業員の権利義務の移転方法や起こりやすい問題について、スキームごとに説明してきました。

ここで、従業員の権利義務の移転にはどのような対策が必要か説明します。

1.従業員への配慮を忘れない

まず従業員への配慮を忘れないことが重要です。

会社を移る従業員は、これからの待遇や環境に不安を抱えやすいものです。
会社の社風や考え方になじめず、精神的に辛くなる人もめずらしくありません。

また、事業譲渡や会社分割の場合、これまでの会社に残る人もいます。
会社に残る従業員のなかにも、会社の形が変わることで不安を抱く人が出てくるでしょう。
さらに、新しい会社の待遇や事業譲渡自体に納得がいかず、反感を持つ場合も考えられます。

不安や反感から従業員が大量に辞めてしまうことのないように、これからの待遇など、労働契約について誠実な態度で丁寧に説明することが大切です。

その際、従業員にとって不利益になることも、漏れなく伝えるように注意してください。
あとから、「知らされていなかった」とトラブルになる可能性がなくなります。
会社になじむように、M&A成立後のフォローも忘れてはいけません。

2.法律上、権利濫用とみられ不当行為とならないように注意

社会通念上、相当であると認められない解雇は、労働契約法において権利濫用として不当行為になりますので注意が必要です。
従業員に納得してもらえるように丁寧な説明を心掛けましょう。

会社分割に関する法律の一つである労働承継法でも、「理解と協力を得る必要性」が明記されています。
従業員の理解を得ることが、法令上のトラブル回避につながっていきます。

3.社会保険労務士の意見を聞きながら行う

権利濫用として不当行為になる可能性もあることから、従業員の権利義務には、専門的な知識が必要です。
そういう場合は、労務のプロフェッショナルである「社会保険労務士」の意見を聞きながら行うと安心でしょう。

社会保険労務士に相談すれば、法律上のことだけでなくこれまでの経験から、従業員の理解を得るポイントや、説明する適切な時期、話し方のアドバイスをもらうこともできます。

当サイトを運営する「税理士法人Bricks&UK」は、グループ内に社会保険労務士事務所もあります。
M&A自体はもちろん、従業員の権利義務の移転についてもアドバイスを行っています。
労務のプロが法律上の注意点、従業員とのやりとりについて親身にアドバイスしますので、安心してM&Aを行えます。

労務関連の対応でお悩みや不安がある場合は、ぜひお気軽にご相談くださいませ。

まとめ~労働者の権利義務の移転でもBricks&UKはお役に立ちます!~

M&Aにおける労働条件承継の注意点~移転はスキームによって異なる~

従業員の権利義務の移転は、M&Aの成功の可否に大きく関わっています。
しかし、権利義務の移転はスキームごとに仕方も変わり、専門的な知識がないとわかりにくい部分が多くあります。

また、従業員の離職を招かないためのコツを押さえる必要がありますし、権利濫用にも気をつけなければなりません。
労働契約法など、法律関係にも精通している「M&A Station」なら、適切なアドバイスが行えます。
顕在化した問題を解決するためのコンサルティングサービスもあります。

M&Aを検討している場合は、ぜひ一度お問い合わせください。

社会保険労務士の額賀

この記事の監修M&A労務アドバイザー 額賀 康宏

社会保険労務士事務所Bricks&UKに所属する社会保険労務士。
M&A Stationでは労務関連のスペシャリストとして、統合プロセスでの労務トラブル回避などに有益なアドバイスを提供している。

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