【M&Aで事業譲渡】異業者間で行うメリットは?他のスキームとの違いも
2023.9.20
2023.9.20
M&Aにはさまざまなスキームが存在しますが、会社の事業の全部、または一部をほかの会社に譲渡するスキームが「事業譲渡」です。
本記事では、M&Aでの事業譲渡において異業種間で行うことにメリットがあるのかどうかについて詳しく解説します。
異業種間で行う場合に着目して、メリット・デメリットも見ていきましょう。
事業譲渡が向いているケースも紹介しますので、M&Aを検討している経営者には有用な内容になっています。
Contents
事業譲渡とはどのようなものか説明します。種類についても確認しておきましょう。
事業譲渡とは、会社の事業の全部または一部をほかの会社に譲渡するM&Aのスキーム(手法)の1つです。
事業譲渡の大きな特徴として、譲渡する事業を選択できるという点があげられます。
資産や負債も、契約によって選択することが可能です。選択できることで譲受企業(買い手)も見つけやすくなるわけですが、譲渡の対象ごとに個別で手続きしなければなりません。
そのため、事業譲渡には手続きが複雑になるというデメリットもあります。
また、事業を譲渡しても経営権は譲渡企業(売り手)に残るという特徴もあります。
仮に全ての事業を譲渡した場合でも、経営権を持つのは譲渡企業です。
なお、事業譲渡と似ている言葉に「事業承継」がありますが、これは全く別の意味と捉えてください。
事業の全部または一部を譲渡する事業譲渡に対して、事業承継とは経営者から後継者に会社を引き継ぐことを指します。
事業譲渡には「全部譲渡」と「一部譲渡」の2種類があります。
全部譲渡とは事業の全てを譲渡することです。
それに対して一部譲渡は、会社の事業のうち一部を切り離して譲渡する方法になります。
M&Aのスキームには、事業譲渡のほかに「株式譲渡」「会社分割」「合併」があります。
それぞれの特徴と違いを説明します。
株式譲渡とは、株主が持つ株式を買い手である譲受企業に譲渡する方法です。
中小企業では多く用いられており、M&Aの最も代表的なスキームと言っていいでしょう。
譲渡企業は株式の対価として現金を受け取り、譲受企業は経営権を取得します。
事業譲渡では経営権は譲渡企業に残ると説明しました。それに対して株式譲渡では、経営権が譲受企業に移るという大きな違いがあるわけです。
また、手続きの容易さも違いの1つと言えるでしょう。
事業譲渡では譲渡対象ごとに手続きが必要ですが、株式譲渡の手続きは対価の支払いと株主名簿の書き換えだけです。
株式譲渡の方が、手続きは簡単ということになります。
その他にも事業譲渡と株式譲渡には以下の違いがあります。
譲渡対象 | 契約 | |
事業譲渡 | 事業の資産が譲渡対象 | 事業譲渡契約を締結する |
株式譲渡 | 株式が譲渡対象 | 株式譲渡契約を締結する |
会社分割とは、会社の中身を事業ごとに分割して譲渡するスキームのことです。
新たに設立された会社が親会社となる新設分割と、既存の会社が親会社になる吸収分割の2種類があります。
事業譲渡と会社分割の大きな違いは、会社法上の組織再編に該当するかどうかです。
会社分割は会社法上の組織再編に該当しますが、事業譲渡は該当しません。他にも、例えば以下の違いがあります。
許認可 | 支払われる対価 | |
事業譲渡 | 許認可は引き継がれない | 対価は現金のみ |
会社分割 | 一部を除き許認可は原則引き継がれる | 原則対価は株式 (吸収分割の場合は株式以外でも可能) |
合併とは、2社以上の会社が合わさって法的に1つの会社になるM&Aのスキームです。
合併には、新設合併と吸収合併の2種類があります。
新設合併とは、新たに会社を設立して資産・負債を移す方法です。
また、吸収合併では一方の会社が消滅し、もう一方の会社が消滅会社の全てを引き継ぎます。
事業譲渡では譲渡する対象を選ぶことができますが、合併の場合、負債を含め会社の全てを承継することになります。ほかの違いは以下のとおりです。
許認可 | 登記の必要性 | |
事業譲渡 | 許認可は引き継がれない | 登記申請は不要 |
合併 | 許認可は原則引き継がれる (ただし新設合併の場合は引き継がれない) | 登記申請が必要 |
事業譲渡には売り手が経営権を維持できたり、買い手も負債の引き継ぎを避けられたりとさまざまなメリットがあります。
ここでは、特に異業種間の事業譲渡に着目してメリットを紹介します。
売り手側である譲渡企業と買い手の譲受企業のメリットは以下のとおりです。
メリットとして、これまでのスタンスが尊重されるという点があげられます。
譲受企業には事業に対する経験がないわけですから、譲渡企業の方法が尊重される傾向にあります。事業譲渡後も、効率的な業務が行えるでしょう。
また、同業間とは異なるシナジー効果が生まれる可能性もあります。
異業種から新規参入するとなると、準備に時間も手間もかかるものです。
事業が安定するまでにも、ある程度の時間が必要でしょう。既存の事業を譲り受ければ、早い段階で一定の売上が見込まれます。
また事業に関連がない分、それぞれ独立性が強くなります。リスク分散することが可能でしょう。
紹介したように異業種間の事業譲渡にはメリットが多いわけですが、デメリットもあります。
しっかりと確認しておきましょう。
M&Aでは、相手企業から経営者を派遣してもらえる場合があります。
しかし、異業種間の事業譲渡だと相手に経験がないため難しいでしょう。
また、同種が多く集まることで大きな効果が得られることをスケールメリットと言いますが、異業種間の事業譲渡ではなかなかスケールメリットは得られません。
事業を大きくすれば、コストが膨らむのは通常です。
同業ではなく異業種となると、共通化できる資産がない分さらにコストがかさみます。
また、事業の経験がないためマネジメントが難しいというデメリットもあります。
ここで事業譲渡が向いているケースを紹介します。以下の場合、事業譲渡を検討してみてください。
譲渡企業が事業の一部を継続していたい場合は、事業譲渡が向いています。
また、事業譲渡では経営権が譲渡企業に残りますから、経営権を持ち続けたい場合も向いているでしょう。
事業譲渡では譲渡する事業を選択できるため、債務は引き継がなくて済むメリットがあります。
譲受企業が債務を引き継ぎたくないという場合は、事業譲渡が向いています。
会社全体を買収する資金が譲受企業にない場合も、事業譲渡は1つの方法です。
一部の事業であれば、全てを買収するほど資金がかかりません。
事業譲渡などのM&Aには専門的な知識と経験が必要なため、その道のプロへの依頼が安心でしょう。
しかし、専門家といっても得意分野はさまざま。M&Aの仲介業務を行っているところならどこでも良いわけではありません。依頼する際には注意が必要です。
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この記事の監修M&Aシニアアドバイザー 齊藤 宏介
税理士法人Bricks&UKにて、税務・会計の豊富な経験から事業者の良きパートナーとして活躍。
M&A Stationではアドバイザーの中心的存在として、様々な業種の会社へのM&Aアドバイザリー業務を取り仕切る。
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