【買収後のPMI】人事制度の差異はどう統合すればいい?
2021.4.20
2021.4.20
M&Aを実施した買収側が手にするものとして、売却側の事業・資産・権利義務・人材・技術・ノウハウなどがあります。
その中で、目論んだM&Aの効果を発揮できるかどうかの鍵を握るのは「人材」です。
当然、それは売却側から得た人材だけでなく、従来から買収側に所属している社員も含みます。
それら社員が業績拡大の目的意識を持ち、高いモチベーションを抱かせるために重要なのが、PMI(Post Merger Integration=M&A後の経営統合プロセス)で行う人事制度の統合です。
それでは、異なる人事制度の下で業務を行ってきた社員たちを得心させるには、どのような人事制度の統合を行えばよいのか考えてみましょう。
Contents
買収側、被買収側において人事制度が全く同じということはまずないと思われます。
そこで、PMIでは人事制度の統合処置の必要が生じますが、それには大きく分けて以下の4つのリスクがあります。
これらリスクには、それぞれ相関関係があり、全てのリスクを完全に同時に排除することは極めて困難です。
各リスクの概要を掲示します。
給与・待遇などの労働条件が良い企業側の水準に人事制度を合わせるとするならば、必然的に人件費が高騰化します。
そうなると、従前の人件費で策定していた事業計画は、全て下方修正せざるを得ません。
人件費高騰化リスクと反対に、給与などが低い企業側の水準で新たな人事制度をまとめる場合、人件費を削減し収益を増大させる効果が見込めます。
しかし、給与が下がる社員のモチベーションが低下するのは、火を見るよりも明らかです。
計画どおりの業績が上げられる可能性も下がります。
社員のモチベーション低下リスクのケースにおいては、給与が下がった社員から、不当な不利益を被ったとして訴訟を起こされるかもしれません。
その場合、一個人ではなく集団訴訟となる可能性も高く、これにかかる手間・費用・時間は会社にとって多大な損失です。
また、労働組合がある場合、訴訟騒ぎにならずとも、労使間の激しい対立の呼び水となるのは避けられないでしょう。
新たな人事制度を構築・策定するのも大変ですが、その新人事制度を社員に周知し、管理職には熟知させねばなりません。
何らかの不備が生じて、社員の一部にでも不公平感を与えてしまっては、人事制度は台無しです。
したがって、管理側における新人事制度の運用には、慎重さが求められるため労苦が多くなります。
異なる人事制度を統合して新しい人事制度を作ろうとするために、前章のようなリスクが生じるのではないかと考え、人事制度の統合を行わず、従前のまま、それぞれ別の人事制度を残して運用するという方策を行ったケースもあります。
しかし、この方策には以下の問題があり、それを解決する手段がありません。
以上のことから、新人事制度を策定せず従来の複数の人事制度を併用することは現実的ではありません。
それではあらためて、給与・待遇などの労働条件が良い企業側の人事制度に合わせる統合を行うケースについて、考えてみましょう。
労働条件が低かった側の社員は、軒並み給与が上がるわけですから、当然、モチベーションがアップするのは間違いありません。
では、労働条件が高かった側の社員は、どうでしょう。
M&Aという大きな経営戦略が取られたことに対して、何らかの期待感を持つ社員もおり、その場合、何も待遇が変わらないことに対して、多少なりともモチベーションがダウンする恐れがあります。
また、M&Aのおかげで給与が低い側だった社員の待遇が良くなったのだという、一種の心理的優位感が給与の高い側だった社員の心の中に芽生え、社風融合の障害になる可能性も否定できません。
そして、いずれにしてもこのケースでは、会社にとって人件費の増大が大幅なコスト増となって収益を下げる要因となります。
4リスクの判定としては以下のとおりです。
前章とは逆のケース、つまり、労働条件の低い方に合わせた人事制度の統合を行う場合についても細部を検証してみましょう。
コスト削減効果、給与が下がる社員のモチベーション低下、法的問題化リスクは先述したとおりです。
加えて、給与が変わらない、労働条件が低かった側の社員の場合、M&Aへの期待感が裏切られた心情から、不安感・不満感が増長されることになって、モチベーションは低下気味となり得ます。
また、労働組合がある場合は、新人事制度が労使交渉の火種となり、通常よりも交渉に力を割かねばならなくなるため、運用面におけるリスクは増大すると見るべきです。
したがって、このケースでの4リスクの判定は、以下のようになります。
ここまで見てきたように、PMIでの人事制度統合では、4方面のリスクを同時に解消する手段が見当たりません。
そのため個々のケースにおいて、どのリスクに目をつぶり、どのリスクだけは絶対に避けるといった取捨選択をする大局的判断が必要になります。
また、人事制度の統合は、単に評価制度や就業規則そのものの策定だけではなく、M&A実施で企図したシナジー効果を得るために、組織再編も合わせて考えるべきことです。
そして、組織再編による人員の再配置が有効に機能するためには、フラットで公平感があると社員が感じられる人事制度構築を目指す必要があります。
したがって、拙速な人事制度の統合は避け、専門家に相談しながら多角的に検討して新たな人事制度を取り決めることを念頭に置きましょう。
近年、M&Aが活発化してきたことに伴い、M&A仲介会社の数も大きく増大しました。
しかしながら、多くのM&A仲介会社の業務範囲は、文字どおり「仲介」までであり、M&A成立後のPMIに対するサポートサービスを提供している会社は少ないのが実情です。
M&A Stationを運営する「税理士法人Bricks&UK」では、グループとして税理士、社会保険労務士、司法書士、M&Aアドバイザーが在籍しています。
買収後の難問であるPMIについても、それら各専門家スタッフによる総力を挙げたお力添えが可能です。
M&Aで買収を検討される際には、買収後のPMIサポートも万全であるM&A Stationまで、お気軽にお問い合わせください。
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