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【M&A最新動向】コロナ禍での医療業界(医療法人)のM&A動向

医療法人は一般企業のような営利追及は行いません。
非常に特殊性の高い業界ゆえに、M&Aとは無縁のイメージかも知れません。

ですが医療法人も法人である以上M&A実施は可能であり、近年、業界内の事情からM&Aの重要性が高まっている業界でもあります。

本記事では、医療法人の特殊性、医療業界のM&Aの動向・手法・メリット・注意点などを解説します。

医療業界の定義・特徴

総務省の日本標準産業分類において、医療業は「医師又は歯科医師等が患者に対して医業又は医業類似行為を行う事業所及びこれに直接関連するサービスを提供する事業所」と定義されています。

これに該当する主なものが、病院(20人以上の入院が可能)と診療所(入院可能20人未満)です。
日本では、民間の病院・診療所(クリニック)の場合、医療法に基づき、医療法人という法人形態を取ることが可能となっています(各都道府県知事の認可が必要)。

医療法人には社団医療法人と財団医療法人の2種がありますが、ほとんどの病院・クリニックが社団医療法人です。
社団医療法人は社員(社団の構成員のこと。一般企業の従業員とは意味が異なる)が出資して設立する医療法人で、財団医療法人は寄附された出資金で設立する医療法人のことを意味します。

医療業界を取り巻く環境・コロナ禍と2025年問題

独立行政法人福祉医療機構の「病院経営動向調査(2021年3月特別調査)によると、2020年度(2020年4月~2021年3月)の決算見込みについての回答結果は以下のとおりです。

病院医療法人
減収50%56.4%
横ばい37.4%27.3%
増加11.5%14.5%
その他1.1%1.8%

このように、医療業界では新型コロナウィルス感染拡大問題により、過半数の病院・医療法人が厳しい経営状況にさらされているのです。

その一方で、医療業界には「2025(令和7)年問題」と呼ばれる懸案事項も目前に迫ってきています。
これは、第一次ベビーブームである団塊の世代が2025年に75歳以上の後期高齢者になり、日本の人口の18.1%(厚生労働省の試算、65歳以上は30.3%)を占める事態のことです。

人材(医師・看護師)不足が指摘される中、医療・介護ニーズがますます増大していくことが予想され、各病院・医療法人の課題が尽ない状況となっています。

医療業界のM&A動向

【M&A最新動向】コロナ禍での医療業界(医療法人)のM&A動向

日本のほとんどの産業における中小企業の共通の経営課題が、人材不足と後継者不在です。
医療業界でも、患者数に対して医師・看護師不足が従前より指摘されています。

また、病院・クリニック経営者が高齢を迎えれば事業承継が必要です。
しかし昨今は、親の後を継がない子供の増加や、子供が医師であっても経営者の資質に欠けるケースなどにより、後継者不在の病院・クリニックも少なくありません。

さらに、病院・医療法人の場合には、国による診療報酬引き下げ改定によって経営難に陥る場合もあります。
これらの問題を解決する手段としてM&Aは有効な経営戦略であり、実施されるケースが年々、増加中です。
特に医療業界のM&Aでは、事業譲渡の実施が多くなっています。

医療業界のM&Aの手法

ここでは、医療業界で用いられるM&Aの具体的な手法について、以下の2ケースに分けて概要を掲示します。

医療法人同士の場合

出資持分譲渡による経営権の取得:過半数の社員の出資持分を取得(買収)することで経営の実権を獲得する。持分ありの社団医療法人の場合に実施可能な手法。

社員の入れ換えによる経営権の取得:売り手側の社員(財団医療法人の場合は理事・評議員)が買い手側とメンバー交代して経営権を得る。辞めた社員らには退職金という形で対価を支払う。持分なしの社団医療法人と財団医療法人で実施可能な手法。

吸収合併:複数の医療法人を1つに統合する手法。法人格が存続する医療法人以外は消滅する。

新設合併:上記と同様の手法だが存続するのは新設した医療法人であるケース。

吸収分割:売り手側医療法人の特定の事業部門を切り出し買い手側医療法人に承継させる手法。

新設分割:上記と同様の手法だが承継するのが新設の医療法人であるケース。

事業譲渡:売り手側の事業や資産などを選別して譲渡する手法。ただし許認可は売買できない。売り手が個人病院の場合、この手法しか選択肢がない。

一般企業の場合

医療法の定めにより、一般企業が医療法人を運営したり一体化したりすることは認められません。
したがって、M&A手法としては出資持分の譲渡か、社員(理事・評議員)の交代を用いたうえで、自社の代弁者役の人物を社員(理事・評議員)に送り込み、間接的に経営を主導することになります。

また、一般企業と医療法人間での資本業務提携(広義のM&A)は認められており、一定額の出資をした一般企業が医療法人の事業・経営に協力するという手段は可能です。

医療業界でM&Aするメリットはあるのか?

前述の通り、医療法人は公共性が高い性質上、一般企業が自社に一体化することはできません。
また、一般企業は医療法人の社員・役員とはなれないため、医療法人の経営権を直接的に取得することも不可となります。
ではM&Aをするメリットはあるのでしょうか?

ここでは医療業界でのM&Aのメリットについて、以下の2ケースに分けて説明します。

医療法人同士の場合のメリット

買い手側医療法人のメリットとしては、まず規模の拡大があります。
シンプルに、病床が増加し受け入れられる患者数が増加するのは大きな魅力です。
また、医療業界の慢性的な課題である人材(医師・看護師)が確保できるのも大きなメリットになります。

対して売り手側医療法人のメリットは、買い手側の潤沢な資金が得られることで経営難からの脱却や老朽施設の入れ替え・建て替え、後継者問題の解決、従業員の雇用維持などが挙げられます。

一般企業の場合のメリット

一般企業が医療業界に新規参入できることが最大のメリットと言えます。
特に医療法人はその特殊性から、事業開始には多くの手続きや許認可などの準備が必要です。
また、売り手医療法人も買い手の潤沢な資金で経営立て直しができるでしょう。

ただし、医療法により医療法人は営利追及はできません。
そのため、実際のところは一般企業によるM&Aはそれほど活発ではないのが現実です。
ただ、近年では出資を介した資本業務提携の動きは見られるようになってきています。

病院・医療法人の買収と非営利性

病院・クリニック・医療法人などが行う医療事業は人命に関わるものです。
そのため、病院・クリニック・医療法人などが営利を追求する経営を行うのは、医療法により禁じられています。

病院・クリニックを医師個人や医療法人が開設しようとする場合、自治体の許可が必要です。
その申請の際、仮に営利目的の病院・クリニックの開設と判断されれば、許可は出ず病院・クリニックを開設できません。

また、医療法人の設立でも都道府県知事の認可が必要ですが、医療法では医療法人に対して剰余金の配当禁止を定めています。

このように医療業界は「非営利性」という特徴を持った業界なのです。

医療業界のM&Aで注意するポイント

【M&A最新動向】コロナ禍での医療業界(医療法人)のM&A動向

医療業界は非常に専門性の高い分野であるため、M&Aにも専門的な知見が必要になってきます。医療業界のM&Aで買い手側の注意点としては、以下の4点が挙げられます。

周辺環境・競合など立地条件をチェック

営利追及しないのが医療業界と言っても、患者が来なければ経営破綻してしまいます。
患者側の視点からみるとよほどの理由がない限り、わざわざアクセスの悪い病院へ足を運ぶことはないでしょう。
したがって、患者が訪れやすい場所に立地している病院・クリニックか、または駅からの直通バスなど簡易な移動手段が確立されているかという点は重要な要素です。

それらに合わせて、競合する病院・クリニックが近接地にあるかどうかも注意しましょう。
良い立地には競合の病院・クリニックが進出してくることがあり、将来も見越した観点からの情報収集も欠かせません。

収益力はあるかどうか

経営が苦しくては、本来の使命である患者の治療が十分に行えない可能性もあり、営利追及しないとは言え、病院・クリニックでも収益力は重要なファクターです。

具体的なチェック内容としては、以下のような項目になります。

  • 診察料金の妥当性(周辺の病院・クリニックの料金との差を比較)
  • 患者数の推移(減少傾向・増加傾向のどちらでも、その理由まで調べる)
  • 病床の稼働割合(患者数との関連性の見極め)

収益力に関する正確な情報から検討しなければいけません。

医師・看護師など従事者の満足度はどうか

病院・クリニックの評価を左右する要素には医師・看護師の存在もあります。
医師・看護師がやりがいと満足度を持って働いていなければ、患者から良い評価も得られないでしょう。

ただし、一概に医師・看護師の満足度を調べるのは容易ではありません。
そこで、以下のような点をチェックすることで、医師・看護師の満足度を推し測るケースが主流です。

  • 給与額(過去からの金額推移も調べる)は適切か
  • シフト内容・体制はどうか
  • 担当業務・役割の妥当性はあるか

設備は老朽化していないか?機能は充実しているか?

診療科によって施設の差異はありますが、医療機関にとって医療設備は欠かせません。
また、医療技術の進歩に伴って医療設備・施設は年々、新たなものが生み出されています。

つまり、一定の設立歴のある医療機関の場合、設立当初に導入した医療設備では、老朽化・陳腐化してしまっているかもしれません。
安全性という観点も含め、医療設備の仕様や導入時期、使用実態などを入念に確認する必要があります。

まとめ~医療業界のM&AはM&A Stationにおまかせ~

【M&A最新動向】コロナ禍での医療業界(医療法人)のM&A動向

一般企業とは違う独自の法人形態である医療法人や個人経営のクリニックなど、医療業界には特殊性があります。
医療業界でM&Aを実施するならば、その特殊性にも対応できる専門家のサポートが欠かせません。

M&A Stationには、医療業界のM&Aに豊富な知識と経験を有するアドバイザーが多数、在籍しています。
国の認定を受けた支援機関(認定経営革新等支援機関)である税理士法人Bricks&UKだからこそ、M&Aだけでなく、資金調達サポートや事業計画書の無料診断などのお手伝いもできます。

医療業界のM&Aをご検討されている場合には、いつでもお気軽にお問い合わせくださいませ。

アドバイザーの齊藤

この記事の監修M&Aシニアアドバイザー 齊藤 宏介

税理士法人Bricks&UKにて、税務・会計の豊富な経験から事業者の良きパートナーとして活躍。
M&A Stationではアドバイザーの中心的存在として、様々な業種の会社へのM&Aアドバイザリー業務を取り仕切る。

会社の買収・売却、事業承継…M&A Stationにおまかせください!

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M&A Stationを運営する「税理士法人Bricks&UK」は、顧問契約数2,500社以上、資金繰りをはじめ経営に関するコンサルティングを得意分野とする総合事務所です。
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