【買収後のPMI】社風融合でどのように一体感を育むか
2021.5.09
2021.5.09
企業、または事業買収は、売却企業を選定し、交渉~デューデリジェンス(売却企業の精密調査)を経てM&Aが成立します。
売却側であれば、これでM&Aは完了と言えるでしょう。
しかし買収側は見込んだシナジー効果が創出され、期待どおりの業績を上げられるかどうか、買収後こそがM&Aの本番です。
その際に必ず実施することになるPMI(経営統合プロセス)で、どの企業でも苦労することのひとつに社風融合があります。
売却側・買収側で異なる企業文化について、買収実施後、どのように一体感を醸成すればよいか考えてみましょう。
Contents
買収側にとってM&Aでの最大のリスク・デメリットは、社風融合の失敗により、PMIに必要以上に時間を要してしまうこととも言われています。
その具体例として、以下の3ケースを見てみましょう。
同一業界内のM&Aだった場合でも、メーカー・流通・販社では、その業態や人材のタイプは全く異なります。
ステレオタイプな区分けをすれば、メーカーは職人気質であるの対し、営業系(流通・販社)は体育会系的側面が強いでしょう。
この場合、異なる業態への理解が進みにくく、相手の社風にアレルギー反応を起こしてしまうことがよく見られます。
トップダウンにより社内の全てが取り仕切られてきた会社と、ボトムアップ型で運営されてきた会社の場合も、社風は180度異なります。
M&A後、そのまま手をこまねていると全く社風融合は進まず、現場における業務のシナジー効果創出は難しいでしょう。
設立から一定の歴史があり、その年月の中で形作られた伝統的しきたり・社風を持つような企業と、社歴が浅く現代風の自由な気風であるベンチャー系企業では、その企業文化、つまりは従業員一人ひとりの考え方・業務への感覚が異なります。この場合、特に伝統がある企業側の従業員が、「見えない壁」を作りがちです。その壁を打破しない限り、社風融合は進みません。
M&A後のPMIにおいて社風融合を成功させるためには、先例としてどのような失敗があったのか知っておくことも一助になります。
以下に代表的な失敗事例4ケースを掲示しますので、それぞれ内容を確認してください。
株式譲渡を用いて被買収側企業を「子会社」とした場合、「親会社」である買収側としては、率直な感覚として、子会社は親会社に従うものと思いがちです。
その場合、PMIにおいても、社風を含め規則やシステムなど、全て親会社側のものを当たり前として、子会社に強要してしまうことが少なくありません。
冷静になって考えればわかることですが、このやり方は、被買収側従業員に反発心を抱かせ社風融合は失敗します。
買収側の社風強要を避ける方法として少なからず試みられるのが、買収側と被買収側それぞれの企業文化の良いところを見い出し、それらをつまみ合わせて社風融合を図ろうとするものです。
これは、一見ベターな方策に見えます。
しかし、従業員の立場からすれば、双方ともこれまでの社風とは異なるものを受け入れねばならないことになり、強要という圧迫感はないものの、一体感にはほど遠いチグハグな施策です。
買収側において、M&A成約までの担当者と、M&A成立後、現場組織でPMIを取り仕切るのは別の人間になることがほとんどです。
これは組織上、やむを得ません。
このとき、M&Aの担当者からPMIの担当者へ、被買収側の企業文化も含めた十分な情報の共有がなされない場合、有用なPMIの計画は策定できず、社風融合も進みません。
M&Aは、従業員にとっては寝耳に水、青天の霹靂ともいえる事態です。
特に、それは被買収側従業員に顕著でしょう。
「会社が身売りされた」などの悪いイメージを持つケースもあり、精神的に不安や不満が渦巻きます。
したがって、M&Aを従業員に公表する際には、十分な説明をして精神的ケアを図るようにしておかないと、いくら念入りにPMIを策定していても、うまくいきません。
企業文化とは、規定などのように明文化されたものではありません。
それだけに、社風融合は厄介なものです。
しかし、M&Aという経営戦略に舵を切るのであれば、そのメリットを最大限享受するためにも、有効なPMIにより社風融合を実現させましょう。
以下の3ポイントを押さえておけば、社風融合は決して難しいものではありません。
「融合」という言葉に固執すると、買収側・被買収側それぞれの企業文化を何とかうまく掛け合わせようと考えてしまいがちです。
そうではなくて、お互いがそれぞれの企業文化をリスペクトし、すり合わせるという感覚を持つようにしましょう。
強引に1つに合わせるのではなく、歩み寄りの意識を持たせることです。
「買収側は被買収側をよそ者扱いしない」、「被買収側はよそ者根性を持って卑屈にならない」、この2つの方針を体現する施策をPMIに盛り込み、その方針について、経営トップが明確なメッセージを発信しましょう。
M&Aの成約を専門家であるM&A仲介会社やアドバイザーなどに任せたように、PMIについても、その専門家に相談・依頼して準備を進めるべきです。
特にM&A・PMIに不慣れな状況であれば、多くの知見・ノウハウを持っている専門家の起用は必須といっていいでしょう。
近年、M&Aが活発化してきたことに伴い、M&A仲介会社の数も大きく増大しました。
しかしながら、多くのM&A仲介会社の業務範囲は、文字どおり「仲介」までであり、M&A成立後のPMIに対するサポートサービスを提供している会社は少ないのが実情です。
M&A Stationを運営する「税理士法人Bricks&UK」では、グループとして税理士、社労士、司法書士、M&Aアドバイザーが在籍しています。
買収後の難問であるPMIについても、それら各専門家スタッフによる総力を挙げたお力添えが可能です。
M&Aで買収を検討される際には、買収後のPMIサポートも万全であるM&A Stationまで、お気軽にお問い合わせください。
電話、お問い合わせフォーム、また、LINEからのお問い合わせも可能となっております。
この記事の監修M&A労務アドバイザー 額賀 康宏
社会保険労務士事務所Bricks&UKに所属する社会保険労務士。
M&A Stationでは労務関連のスペシャリストとして、統合プロセスでの労務トラブル回避などに有益なアドバイスを提供している。
近年、M&Aが活発化してきたことに伴い、M&A仲介会社の数も大きく増大しました。
しかしながら、多くのM&A仲介会社の業務範囲は、文字どおり「仲介」までであり、M&A成立後のPMIに対するサポートサービスを提供している会社は少ないのが実情です。
M&A Stationを運営する「税理士法人Bricks&UK」では、グループとして税理士、社会保険労務士、司法書士、M&Aアドバイザーが在籍しています。
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