スクイーズアウトとは?4つの手法と流れ、M&Aでの必要性
2023.12.13
2023.12.13
株式会社の経営では重要な決議事項について、株主総会で株主の合意を得なければなりません。
ただ、M&Aを実行する時など、場合により少数株主を排除しなければならない場面もあります。
少数株主を排除する方法として「スクイーズアウト」がありますが、詳しい内容や方法がわからないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、スクイーズアウトとはなにか?手法やM&Aにおけるその重要性は?などについて解説いたします。
Contents
まずはスクイーズアウトとはどのようなものなのか、概要を説明します。
M&Aでスクイーズアウトが必要になる場合もありますが、その理由もここで見ておきましょう。
スクイーズアウトとは、少数株主から大株主が株式を強制的に買い取る手法です。
「締め出し」や「キャッシュアウト」とも呼ばれます。
意見が対立する少数株主に金銭等を交付して、強制的に株式を買い取り排除します。
スクイーズアウトを行うことで、株主の合意形成がしやすくなります。
M&Aでは、株式譲渡の手法が広く利用されています。
仮に少数株主がM&Aに反対すれば、買い手は全株式を取得することができません。
完全子会社化できなくなり、M&Aが成立しない可能性もでてくるでしょう。
このような事態を避けるために、M&Aにおいてもスクイーズアウトが必要な場合があります。
スクイーズアウトの概要がわかったところで、具体的な手法や流れについて見ていきましょう。
スクイーズアウトの手法を説明します。前提として、スクイーズアウトを行う前に少数株主に買い取り交渉を行う必要があります。
交渉でも買い取ることができなかった場合に、スクイーズアウトの手続きをするようにしましょう。
なおクイーズアウトには、主に4つの手法があります。以下の手法です。
議決権の90%以上を保有する株主(特別支配株主)が、他の株主の株式を強制的に取得する方法です。
会社からの承認が必要ですが、株主総会での決議を必要としません。
取締役会設置会社であれば取締役会決議で、取締役会非設置会社であれば過半数の取締役の合意で承認を受けます。
極めてシンプルな方法であることから、短時間でスクイーズアウトを実行することが可能です。
株式併合とは、複数の株式を1株に統合することです。
例えば、100株を1株にする100:1の株式併合を行ったとしましょう。この場合、50株以下の株主が保有株式を1株未満の端株にすることが可能です。
端株では株主としての権利を行使することができませんから、スクイーズアウトの目的が達成されます。
なお、株式併合をするには株主総会で3分の2以上の同意が必要です。
株式併合は必要な持株割合が低くなることから、株式等売渡請求と比較すると手続きが複雑になる特徴があります。
全部取得条件付種類株式は、種類株式の1つで、特定の株式の全てを株主総会の特別決議をもって取得できることが定められている株式のことを指します。
わかりやすく言うと、株主総会を開催して可決されれば、株式の全てを強制的に取得できるという株式です。
この場合、特定の株主に限定して株式を買い上げることはできないため、全ての発行済株式を全部取得条項付種類株式に変更し、その後少数株主が保有する株式を強制的に買い上げます。
少数株主をスクイーズアウトしたら、残った株式を普通株式に戻すことで完了です。
株式併合と同じく株主総会の特別決議が必要な方法になります。
また、種類株式を発行するために定款を変更する必要がありますし、取得にも特別決議が必要なことから手続きがより複雑になります。
上記の理由からコストも時間もかかるため、実務上はあまり利用されない手法となります。
株式交換とは完全子会社化するために、子会社の株主に親会社の株式を交付することを指します。
株式交換を行えば、子会社の株主は全て親会社の株主ということになり、子会社から少数株主を排除することができるわけです。
ただし、この株式交換を行っただけでは少数株主が親会社の株主になるだけに過ぎません。
そこで株式交換後、完全にスクイーズアウトするために親会社の株式併合が必要になります。
親会社が株式併合を行い、少数株主の保有株式を1株未満にすることでスクイーズアウトの目的を達成します。
なお、株式交換には対価を現金で支払う手法もあります。
2017年の税制適格要件の見直し以降、現金対価も活用されるようになりました。
次に、説明した4つのスクイーズアウトの手法について、それぞれの流れを説明します。
特別支配株主の株式等売渡請求は、以下の流れで行われます。
まず、特別支配株主が対象会社に株式売渡請求の通知をします。
株式の取得日、買取価格、算定方法なども通知する必要があります。
特別支配株主から通知を受けた対象会社が承認するかどうか決定をします。
決定内容については特別支配株主に通知する必要があります。
承認の決定は特別支配株主が指定した株式の取得日の20日前までに行わなくてはなりません。
対象会社が承認した場合、特別支配株主が指定した取得日の20日前までに売渡株主等に承認の旨を通知します。
売渡株主以外には、公告で知らせることも可能です。
対象会社は、売渡株主等に通知または公告を行った日のうちいずれか早い日から取得日後6カ月経過するまで、株式等売渡請求に承認した旨などを記載した書面等を本店に備え置く必要があります。
指定した取得日が来たら、特別支配株主は売渡株式等の全てを取得します。
対象会社は、取得日後6カ月を経過するまで売渡株式等に関する事項を記載した書面等を本店に備え置く必要があります。
株式併合は以下の流れで行われます。
株式併合を行うには、前述したように株主総会の特別決議が必要です。
そこでまず、取締役会において株主総会の招集を決議します。
対象会社は、株主総会の日の2週間前または株主に通知した日のうちいずれか早い日から株式併合の効力発生日後6カ月経過するまで、株式併合に関する事項を記載した書面等を本店に備え置く必要があります。
株主総会において、株式併合に関する決議を行います。
議決権の過半数を有する株主が出席したうえで、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成をもって決議されます。
対象会社は、株式併合の効力発生日の2週間前までに、決定した旨の通知・公告を行います。
株主総会で決定された日に効力を発生します。
対象会社は、株式併合の効力発生日後6カ月が経過するまで、株式併に関する事項を記載した書面等を本店に備え置く必要があります。
全部取得条項付種類株式によるスクイーズアウトの流れは以下のとおりです。
対象会社は、取得日後6カ月を経過するまで全部取得条項付株式の取得について記載した書面等を本店に備え置く必要があります。
株主総会において、全部取得条項が付いた株式を取得する特別決議を行います。
対象会社は、全部取得条項付種類株式の株主に対して、株式を取得する旨の通知・公告を行います。
対象会社は取得日に、全部取得条項付種類株式の全部を取得します。
対象会社は取得日後6カ月が経過するまで、全部取得条項付種類株式の取得に関する事項を記載した書面を本店に備え置く必要があります。
株式交換の流れは以下のとおりです。
株式交換では、完全親会社と完全子会社において取締役会決議が必要です。それぞれで決議されたあと、株式交換契約を締結します。
株主および債権者への説明を行います。また、株式交換は株主総会の特別決議が必要です。
事前備え置きの書面等は、株主総会の日の2週間前または株主に通知した日のうちいずれか早い日から、株式交換の効力発生日後6カ月を経過するまで本店に備え置く必要があります。
効力発生日に、完全子会社の株式を全部取得します。効力発生日から2週間以内に株式交換にかかる変更登記が必要です。
効力発生日後6カ月を経過するまで、株式交換に関する事項を記載した書面等を本店に備え置く必要があります。
スクイーズアウトを行うと、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
まずはメリットから確認していきましょう。
スクイーズアウトを行えば、少数株主の意見を気にせず決議できるようになり意思決定を迅速に行えるようになります。
事業運営のためのさまざまな手続き等も、スピーディーに行えるようになるでしょう。
会社を売却する場合、多くの株主に売却の同意を得たり、株式を買い集めたりする必要があります。
スクイーズアウトで株主を少なくすれば、こういった業務を減らすことができ円滑な手続きが可能です。
少数株主がいると、会社は常に株主代表訴訟のリスクを背負いながら経営判断を行わなければなりません。
スクイーズアウトで少数株主を排除すれば、訴訟のリスクを減らすことができます。運営しやすくなるでしょう。
スクイーズアウトにはデメリットもあり、これも正しく理解しておく必要があります。
スクイーズアウトを行うデメリットには、以下のものがあげられます。
スクイーズアウトを行うのは、決して簡単ではありません。
一定の株主の同意が必要なため、実施できないケースもあります。
スクイーズアウトでは、株式への対価の支払いが必要です。
対価が会社や大株主に大きな負担になることも考えられますし、そもそも財力がなければ実施できません。
株式交換では、完全親会社と完全子会社において取締役会決議が必要です。
それぞれで決議されたあと、株式交換契約を締結します。
以上はあくまで参考例ですが、他の業態を選んだ場合もコンセプトの決め方は同じです。
まずは大まかに5W1Hを決め、細部を詰めていくと良いでしょう。特にWhat・When・Whoについては時間を掛けることをおすすめします。
少数株主が反対した場合、M&Aでもスクイーズアウトが必要になるケースがあります。
スクイーズアウトもM&A自体も、深い知識が必要です。専門家に依頼すると安心でしょう。
しかし専門家と言っても得意分野はさまざまですから、依頼する際には注意が必要です。
当サイトを運営する「税理士法人Bricks&UK」では、各分野の専門家がチームを組み連携してM&Aをサポートする体制があります。
M&Aでお悩みの場合はぜひ一度お問い合わせください!
この記事の監修M&Aシニアアドバイザー 齊藤 宏介
税理士法人Bricks&UKにて、税務・会計の豊富な経験から事業者の良きパートナーとして活躍。
M&A Stationではアドバイザーの中心的存在として、様々な業種の会社へのM&Aアドバイザリー業務を取り仕切る。
デューデリジェンスなどへの対応を含め、総合的にM&Aをサポートする体制が備わっているのがM&A Stationです。
進行中のM&A案件に関するセカンドオピニオンも承っております。
まずはお気軽にご相談くださいませ。
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