中小企業の相続税対策にはM&Aが有効?事業承継税制についても解説
2023.9.26
2023.9.26
近年、中小企業を中心にM&Aの件数が増加傾向にあります。
主に会社の合併・買収を指すM&Aですが、実は相続税対策にも有効とされています。
本記事では、なぜ相続税対策に用いられるのか理由を解説いたします。
またM&A以外にも節税方法として、一定の資産につき贈与税や相続税の納税を猶予する制度である事業承継税制を活用するのも代表的です。
この事業承継税制についても詳しく解説していきます。
Contents
まずはM&Aが相続税対策に有効であることを確認するとともに、相続税の基礎知識もおさらいしておきましょう。
事業承継の手段としても活用されるM&Aは、中小企業の相続税対策としても有効な手段。
会社分割や合併などのスキームを使用することで、株式の評価額を下げて節税につなげることができます。
ただし、相続税を気にして無理にM&Aを行うと、経営に支障をきたす可能性もあるため注意しましょう。
M&Aを活用した具体的な相続税対策については、後ほどくわしく説明します。
相続税とは、死亡していた人が持っていた相続財産に課せられる税金のことです。
後継者に事業承継する場合も、相続税が発生します。
相続税は、一定の控除額を差し引き、税率をかけることで算出されます。
具体的な控除額と税率を表で確認しておきましょう。以下のとおりです。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | ― |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
参考:国税庁「相続税の速算表」
表からもわかるように、相続する金額に比例して税率が上がり相続税の負担は大きくなります。
なぜM&Aが相続税対策に有効なのでしょうか。その理由を説明します。
相続税では株式の評価が行われます。
なぜM&Aが相続税対策になるかを理解するには、株式の評価方法を知っておく必要があります。
株式を評価する方法としては、以下の3つがあげられます。
株式の評価方法がわかったところで、なぜM&Aが相続税対策に繋がるのか理由を確認しましょう。以下の理由があります。
会社の規模が大きくなるほど、類似業種比準価額の割合は大きくなります。
合併で会社の規模を大きくして類似業種比準価額方式の比率を高めれば、株式の評価額が下がり節税効果につながります。
例えば株式の評価額の低い会社と高い会社を所有していた場合、それぞれ評価される必要があります。
しかし、株式交換で株式の評価額が低い会社を親会社にすれば、親会社の株式のみが評価されることになるのです。
そのため、2社それぞれで評価されるより価値が低くなり結果、節税につながります。
会社分割とは、会社の事業の一部またはすべてをほかの企業に承継するM&Aの手法です。
会社分割をすれば利益を分散させることが可能なので、類似業種比準価額の評価を低くして、節税することが可能です。
ここまで、M&Aを活用した相続税対策について説明してきましたが、M&A以外にも節税に有効な方法があります。
その代表として「事業承継税制」が挙げられるでしょう。
ここからは、事業承継税制について解説します。
まず、事業承継税制とはどのような制度なのか概要を説明します。
事業承継税制とは、経営者から事業承継した後継者が次の後継者にも承継できた場合、支払うべき相続税や贈与税が猶予または免除される制度です。
多額の贈与税・相続税かかかると事業承継が難しくなる場合があるため、円滑な事業承継が行えるよう、2009年の税制改正で制度が創設されました。
事業承継には一定の要件を満たす必要がありますが、2018年の税制改正で10年間の限定措置として要件が緩和されています。
さらに2019年には、個人向けの事業承継税制も新設されました。
事業承継税制を活用するには一定の要件を満たす必要があります。要件は以下の3つに大きく分けることができます。
それぞれ順番に説明していきます。
経営者の要件は、さらに先代経営者が満たすべき要件と後継者が満たすべき要件に分けることができます。
まず、先代経営者が満たすべき要件は以下のとおりです。
①会社の代表者であったこと
②贈与または相続の直前に会社の筆頭株主であったこと
③贈与の場合贈与後に代表者を退任していること
また、後継者が満たすべき要件は以下になります。
①贈与を受けるときに会社の代表になっていること
②贈与または相続を受けることにより、会社の筆頭株主になること
③贈与の場合贈与時に18歳以上であり、贈与の直前で3年以上役員であり、代表者であること
④相続の場合相続開始の直前に役員であり、相続開始から5カ月後に代表者であること
次に会社の要件を説明します。以下の要件を満たす必要があります。
①中小企業に該当すること
②従業員が1人以上いること
③上場企業、風俗営業会社でないこと
④資産管理会社等に該当しないこと
事業承継税制では、スタート後5年間守るべき要件と5年経過後から守るべき要件があります。
【5年間】
①後継者が会社の代表者で筆頭株主であること
②後継者が猶予対象株式を継続保有していること
③雇用の8割以上を5年間平均で維持すること
【5年後】
①後継者が猶予対象株式を継続保有していること
上記の要件を満たしていれば事業承継税制が活用できます。自社が該当するか、記事を参考に確認してください。
事業承継税制を活用するには、相続から8カ月以内に経済産業局に申請しなければなりません。
また、5年間は1年ごとに税務署や経済産業局に指定の書類を提出する必要があります。
どれも複雑な手続きですから、税理士などの専門家に依頼することをおすすめします。
専門家からのアドバイスをもとに漏れのないよう手続きし、確実に制度が活用できるようにしましょう。
今回は相続税対策として、M&Aと事業承継税制を活用する方法について見てきました。
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この記事の監修M&Aシニアアドバイザー 齊藤 宏介
税理士法人Bricks&UKにて、税務・会計の豊富な経験から事業者の良きパートナーとして活躍。
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