M&Aの企業概要書(IM)とは?書き方やポイントを解説
2021.9.01
2021.9.01
M&Aでは「企業概要書(IM:Information Memorandum)」と呼ばれる、企業の事業内容や財務状況などが詳しく記載された書類が重要な役割を果たすことになります。
一般的には、秘密保持契約を締結してから相手先企業に対してIMを提示します。
なぜならば、最初から詳細な情報開示をしてしまうと、売り手側企業にとっては秘密情報が漏れてしまう可能性があるからです。
こうしたリスクを避けるために、最初はノンネームシートという社名を伏せて基本的な情報だけを記載した書類を譲受候補先企業に対して提示します。
譲受候補先企業が買収とに前向きな場合には秘密保持契約を結んで、その後に企業概要書(IM)を提示するというフローになります。
本記事では、 企業概要書(IM) に関する基本的な知識や記載される主な内容について詳しく解説します。
Contents
企業概要書(IM)には、企業の概要、ビジネスの業内容、財務諸表、といった情報が細かく記載されていて、M&Aにおいては売り手側企業が買い手側企業に対して提示するものです。
記載されている内容を買い手側企業は確認・精査して、M&Aを実行するかどうかを検討しますので、売り手側企業には漏れのない正しい内容を反映させた企業概要書(IM)を提供することが求められます。
上記の点以外にも、買い手側企業がM&Aを推進する際に、重要視すると考えられる情報を推察しながら作成することも重要なポイントとなるでしょう。
M&Aを進める場合には、自社の情報を把握・理解してもらうことが必要なので、「ノンネームシート」と「企業概要書(IM)」という2つの種類の資料を売り手側企業は準備します。
それぞれの役割は似てはいるものの、必要なタイミングが違っています。
ノンネームシートは秘密保持契約を締結する前に提出するものです。
したがって、M&Aに関する希望条件や事業概要などは記載されますが、自社が特定されるような情報や秘密情報などに関するものは記載されていません。
企業概要書(IM) | ノンネームシート | |
売り手会社名 | 開示する | 開示しない |
用途 | 買い手候補募集用 | M&A交渉用 |
主な記載内容 | 会社名・住所 事業内容 事業規模 所在地 売却理由 希望条件 将来の目的 等 | 所在の地域 事業内容 事業規模 売却理由 希望条件 等 |
枚数 | A4用紙一枚程度 | 数十ページの場合もあり |
機密保持契約 | 要契約締結 | 原則、不要 |
企業概要書(IM)に記入される一般的な記入例に関して説明します。
実は記載する項目に明確な決まりはなく、企業や業種によっても異なりますが、一般的には以下が挙げられます。
会社を設立してから本社を移転したようなケースや、2店舗目、あるいは支店や関連企業を新たに開設したような場合には、そうした内容についても記載することが必要になります。
また、従業員数に関して、現時点で雇用している従業員の人数を記載するのですが、雇用したばかりの従業員であっても3ヵ月以上雇用する予定の従業員であれば従業員数に含めるようにします。
自社で製造・販売している取扱商品やお客様に提供しているサービス、ターゲットなど、自社に関する詳細なビジネスの内容を記載します。
その際、主な取引先や取引の流れ(フロー図)なども記載しておけば、買い手側企業は具体的に事業内容のイメージが湧きやすくなるでしょう。
競合他社と比較しての自社の強みをアピールするのも有効です。
また、製品の写真を掲載したり、季節による売上変動やセールスポイントなどを整理しておくことも自社をアピールすることに繋がるものと思われます。
買い手側企業にとっては、事業の内容と強味や価値を把握・理解することがとても重要なので、可能な限り詳細くかつ正確に記載することが必要になります。
損益計算書や賃借対照表などの財務諸表は少なくとも直近3期分は必要です。
売り手側企業は自社の財務状況を正確に買い手側企業に伝えます。
また、銀行などの金融機関から融資を受けていれば借入金額や、ノンバンクなどからのカードローンの有無や借り入れの状況なども必ず記載するようにします。
住宅ローンやカー・ローンなどは、毎月きちんと返済さえしていれば特に問題になることはありませんが、借入金やローンの残債や年間の総返済額を記載するようにして、少額でも借入金があるような場合には包み隠さず記載しとくことが重要になります。
会社を譲渡することになった経緯を記載します。
会社譲渡の理由は個々別々の事例によって異なるものと考えられますが、多くの場合、買い手側企業はどういった目的でM&Aを行うのかを知りたいと考えています。
個人的な事情まで記載する必要はありませんが、事業拡大や販売戦略の手法としてや、長年悩んでいた後継者に関する問題を解決する必要がある、引退して余生を穏やかに過ごしたい、などM&Aを実施する概要が買い手側企業にもわかるように記載することが重要です。
売り手側企業がどういったビジネス・プランに則って経営を進めているかを理解できれば、買い手側企業は、買収した後にどういった戦略を立案して実行すればよいのか、を具体的にイメージすることが可能になるでしょう。
これからのビジネス展開の予定のみならず、具体的にどのようにしてそのプランを実現させてしていくかというアクションレベルの計画も記載しておけば、買い手側企業に対してより買収するメリットを有効に伝えられるでしょう。
作成する場合には以下のような点に気を付けることが必要になります。
重要な虚偽情報が記載されたままでM&Aの交渉を進めてしまい、後になってからデューデリジェンス実施などで虚偽が判明した場合には大きな問題になります。
買い手企業としては企業概要書(IM)の情報が正しいことを前提といてM&Aプロジェクトを前進させるという判断をしているので、そうした判断の根本をひっくり返すほどの大きな情報の間違いであれば尚更でしょう。
売り手側企業は極力高い金額で会社を売却したいのでめ、高値で売れるような良い情報だけを掲載したくなる気持ちもわからなくはないですが、故意に数字を大きくするようなこと絶対に止めてください。
後のデューデリジェンスの段階で、公認会計士、税理士、弁護士、などの外部の専門家から記載されている数字や情報の正確性はきちんと確認されるので、隠し通すことは困難です。
企業概要書(IM)は、売り手企業の経営や事業運営などに関する重要な機密情報の塊と言っても過言ではありません。
もし買い手側企業が、故意でなかったとしても、内容を外部に漏洩してしまったような場合には、売り手企業から損害賠償を請求をされる可能性が高いと考えられます。
企業概要書(IM)をチェックした後で次のステップには進まない、という意思決定をしたような場合であっても、適切に削除・消去するなどの情報管理も重要になります。
例えば、企業概要書(IM)に関する情報はM&Aチーム内に限定して共有するなど、社内でも限られた職員だけが共有することによって、情報漏洩のリスク発生の確率を減少させることを意識するべきです。
開示前に結んだ秘密保持契約書の内容に沿って、適切にIMの情報管理をしましょう。
企業概要書(IM)の記載量が膨大なケースや売り手側企業が自社で作成した場合は、M&Aアドバイザーなどの専門家の目からちゃんと確認しておく必要があります。
企業概要書(IM)は売り手側企業の主導で作成される資料なので、売り手側企業の主観が多分に入り混じった情報になってしまう可能性が考えられます。
具体的には、売り手側企業自身が作成したマーケット・シェアのデータを掲載するような場合には、そのデータの正確性はM&Aアドバイザーなど第三者の目を通してきちんとそのデータの正確性を確認しておく必要があります。
また、許認可や法規制などに関する情報がケースでは、買い手側企業が外部の弁護士などから意見書などを入手する場合も考えられます。
買い手側企業は、企業概要書(IM)をなんでも鵜吞みにするのではなく、情報の正確性については専門家などに分析してもらう、などの対応を実施する場合もあるでしょう。
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