【M&Aの必要書類】ノンネームシートとは?
2021.8.19
2021.8.19
M&Aで本格的な交渉の前段階で必ず用いられる書類が「ノンネームシート」です。
匿名の企業概要書であるノンネームシートは、M&Aの手続きを進めていく上で大きな意味を持ちます。
ですが、M&A以外で一般的にノンネームシートが用いられることはないため、その内実はあまり知られていません。
そこで本記事では、ノンネームシートがM&Aで果たす役割や、実際のノンネームシートの記載内容と書き方、注意点などについて掲示します。
Contents
M&Aの最初期段階、つまり、これからM&Aの交渉相手を探すプロセスで用いられるのがノンネームシートです。
売り手企業がM&Aの交渉相手を決めるには、売り手の情報を伝え、それに興味を示す買い手候補企業を探す必要があります。
ただし、この段階は交渉前ですから秘密保持契約などはなく、売り手の情報を守る術がありません。
そこで売り手企業名は匿名とし、その他の情報も詳細は伏せた状態で事業内容など必要最低限の範囲での情報開示にとどめます。
この売り手が具体的に特定できない内容の資料=企業概要書のことを、企業名が伏せられていることからノンネームシート(Non-name sheets)と呼んでいるのです。
M&Aをサポートする仲介会社が条件の合いそうな企業が見つかった際に、秘密保持契約を締結した後、相手企業に社名などの情報を開示することを「ネームクリア」と言います。
買い手候補の企業がM&Aを進めないと判断した場合、この段階で断ることも可能です。
売り手がM&A仲介会社に業務を依頼していたとしても、売り手企業の情報開示を何もせずに、闇雲に買い手候補企業を探せるものではありません。
買収・売却ニーズが合致し、買収意欲も高い買い手候補企業へ打診するためには、企業概要書の提示は欠かせないのです。
しかし、M&Aは重要な経営戦略であり、その成約が決まるまでは外部に公表するようなものではありません。
したがって、秘密保持契約が締結されていない交渉相手探しの段階では、無用な情報漏洩を避けるために企業名など具体的な企業情報を不特定多数に開示しないのが得策です。
そこで、ノンネームシートという形式での売り手企業の情報開示が行われるようになりました。
ノンネームシートを実際に作成するのは、M&A業務を依頼した仲介会社の担当アドバイザーです。
その際に売り手企業に対し、ヒアリングや資料提示などの情報提供が求められます。
ノンネームシート記載において必要とされる主な情報は、以下の3点です。
担当するM&A仲介会社によって、必要とされる情報は多少の違いがありますが、ここでは上記3点の具体内容を掲示します。
企業概要に必要となる情報としては、以下のようなものがあります。
売却希望条件に掲示すべき内容は大体、以下のようなものです。
法人確定申告書の過去3期~5期分の提出を求められることもありますが、主として必要なのは、以下の情報です。
ノンネームシートには公に決まった形式はないため、M&A仲介会社ごとに独自のテンプレートを用意しています。
ここではM&A Stationを運営するBricks & UKが、実際に用いているノンネームシートのフォーマット内容をサンプルにして記載項目を説明します。
このフォーマットでは記載項目は下記の7つとなっております。
(最後の「情報入手元」は社内で使用するもので、直接的にM&Aに関係するものではありません)
【各記載項目の記入例】
業種 | 売り手企業の業種について記します。 【例】製造業、飲食業 etc. |
売却条件 | 希望するM&Aスキームおよびそのほかに希望する条件を記します。 【例】株式譲渡、事業譲渡 etc. |
売却希望金額 | 希望するM&Aスキームに応じたその希望金額を記します。 |
従業員数 | 従業員数および従業員の引継ぎ有無も記します。 |
企業概要 | 売り手企業の基本情報を掲載します。 【例】事業内容、営業拠点、特徴 etc. |
直近実績 | 直近期の決算実績を記します。 【例】 売上高〇〇〇,〇〇〇 営業利益〇〇,〇〇〇 etc. |
売却理由 | 売却を希望する理由、背景などを記載します。 【例】経営者引退のため、本業に集中するため etc. |
ノンネームシートの最大の特徴は、売り手企業を特定させないことにあります。
したがって会社名は伏せられ、所在地も都道府県名など大まかな地域で記すのが常です。
ただし、一部の特殊な業種などの場合は、同一業者から見れば、都道府県名や主な取引先などの情報があれば、売り手企業の特定ができてしまう場合があります。
これは、場合によってはM&Aアドバイザーでも判断が難しいかもしれません。
売り手自身の判断で、自社が特定されないためには、どこまでの情報開示とするか決めてアドバイザーに伝えましょう。
自社を特定させないことばかりに目が行ってしまうと、本来、買い手候補企業に伝えるべき内容がぼやけてしまう危険性があります。
買い手候補企業が手を挙げてくれないと肝心のM&A交渉に入れないわけですから、ノンネームシートとはいえ、買い手が求める情報は何かということをよく勘案し、うまく情報を開示する工夫も必要です。
この点についてはサポートしてくれるM&Aアドバイザーとよく相談しましょう。
買い手へ自社の情報を伝えるノンネームシートは、自社の企業価値を伝え興味を持ってもらうためのきっかけになるものです。
そのため細心の注意を払い作成する必要があります。
また、初めてのM&Aではノンネームシート作成のためのアドバイザーからのヒアリングで、根掘り葉掘り会社のことを尋ねられるのは不快に感じるかもしれません。
しかし、本記事で掲示したように、ノンネームシートはM&Aを成約させるための大事な出発点です。
サポートを依頼したアドバイザーを信頼し、この記事での情報を参考にしてヒアリングに備えましょう。
M&Aの買い手候補企業探しに欠かせないノンネームシートですが、売り手企業が特定され情報が漏えいするような事態だけは避けなければなりません。
そのためには信頼できる専門家に業務を依頼し、万全なノンネームシートとなるようにヒアリングを受ける必要があります。
M&Aを成功させるためには、信頼できる専門家選びが重要です。
近年は、M&A仲介会社などの数が急増したこともあり、専門家選びにお悩みのケースも増えています。
Bricks&UKでは、グループとして多くの税理士、社会保険労務士、司法書士、M&Aアドバイザーなどが在籍しています。
ノンネームシートの作成も安心してお任せいただますので、M&Aを検討されている場合には、一度、Bricks&UKの無料相談までご連絡ください。
M&A Stationを運営する「税理士法人Bricks&UK」は、顧問契約数2,100社以上、資金繰りをはじめ経営に関するコンサルティングを得意分野とする総合事務所です。
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