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M&Aにおける秘密保持契約の締結

企業が関わる取引や交渉では、秘密保持契約書(または機密保持契約書)が必ず締結されます。

秘密保持契約は、別称でNDA(Non-Disclosure Agreement)またはCA(Confidentiality Agreement)とも呼ばれますが、その端的な意味合いは、当事者相互の秘密保持義務を規定するものです。

事業や会社の情報を開示するM&Aでは、秘密保持契約はより重大な役割を持ちます。
本記事で、M&Aにおける秘密保持契約の重要性を確認しておきましょう。

秘密保持契約の目的

秘密保持契約を締結する主要な目的は、以下の3点です。

秘密情報取扱いルールの策定

M&Aを志向する企業間において、通常、故意に秘密情報を漏らすことはあり得ません。
しかし、社内における運用ミスなどが発端となって、情報が流布されたり表に出てしまったりする可能性はあります。

そのような事態が起きないために、当事者社内において、秘密情報に関わる人物の特定や秘密情報の取り扱い方、情報管理方法などのルールを、こと細かく明確に定めておくことが重要です。

秘密情報漏えい、および漏えいによる損害発生の予防

秘密保持契約では、上記のルールの定めと共に万が一、秘密情報が漏えいしてしまった場合の罰則規定も取り決めます。
その罰則内容は、損害賠償請求を認めるなど大変重いものです。

秘密保持契約では、この罰則規定を設定することで抑止力とし、秘密情報漏えいを未然に防ぐことも狙っています。

漏えい発生時の責任内容や対応の明示

仮に秘密情報が漏えいしてしまった場合、損害賠償請求などの罰則を受けるのは当然として、秘密情報が漏えいした事態をただ野放しにはしておけません。

秘密情報漏えいによって引き起こされた混乱や被害など、事態の収束や打開への対応責任も定めておく必要があります。

秘密保持契約の内容

現在、秘密保持契約書に盛り込まれる内容は、おおむね定型といってもよいものが確立されています。その中でも不可欠である以下の条項について、その内容を認識しておきましょう。

  • 秘密情報の定義
  • 秘密情報の開示範囲の定め
  • 秘密情報を利用する目的の制限(目的外使用の禁止)
  • 秘密保持契約書の利用目的完了時の秘密情報の取り扱い
  • 秘密保持期間の設定
  • 損害賠償の規定

秘密情報の定義

何が秘密情報に該当するか、これを定めておかなければ、保持する情報・漏えいしてはいけない情報とそれ以外の情報の区別がつきません。

一般的に、秘密保持契約書で定義される秘密情報は以下の3つです。

  • 当事者がもう一方の当事者に対して開示する情報
  • 秘密保持契約の存在やその内容
  • 秘密保持契約に基づいて行われる取引交渉の存在とその内容

また、秘密情報に該当しない情報の定義も合わせて示します。
一般的な例外情報は、以下のようなものです。

  • 情報開示時点で、被開示者がすでに知っていた情報
  • 情報開示時点で、公に周知されている情報
  • 情報開示後、被開示者の責任範疇外で公知となった場合
  • 秘密保持義務を負わない正当な第三者により、秘密保持義務を負うことなく被開示者にもたらされた情報

秘密情報の開示範囲の定め

秘密情報を、社内において経営者以外の誰にまで開示してよいか明確に定めます。
社内で多くの人間に秘密情報が知れると、それだけ漏えいのリスクは高まるものです。
したがって、必要最低限の人員に限定します。

例としては、役員やM&A担当部署の管理者・担当者などです。

また、開示の例外措置も合わせて定めます。
M&Aの場合であれば、グループ会社の役員やM&A仲介会社のアドバイザーなど立場的には第三者であっても、M&Aを進める上で情報共有が欠かせない相手を、情報開示範囲に含めておくことを忘れてはなりません。

秘密情報を利用する目的の制限(目的外使用の禁止)

秘密情報漏えいをより高度に防ぐために、秘密情報開示の目的を明示し、その目的以外には使用しないことを定めておくことも必要です。
被開示者はこの定めがないと、知り得た秘密情報を自由に使えることになり、情報漏えいの危険性が高まります。

なお、被開示者において情報の複製を行う場合は、目的の範囲内に限って複製が認められるということも、念入りに言及しておくと安心です。

秘密保持契約書の利用目的完了時の秘密情報の取り扱い

秘密保持契約では、秘密情報の利用目的が完了した後の秘密情報の取り扱いについても定めておかなければいけません。
基本的に利用目的完了後の秘密情報は、複製したものも含めて返還または被開示者側で廃棄させます。

一般的にM&Aの際に開示される秘密情報のほとんどは、書類および電子媒体やネットワークメディアを介したデジタルデータで受け渡しているでしょう。
それらは複製が容易という特徴があるため、単に返還する規定よりも、被開示者側で責任を持って廃棄させ、廃棄を証する文書を提出させるという規定の方が安心できます。

秘密保持期間の設定

秘密保持契約では、契約そのものの有効期間が必ず設定されます。
一般的には1~3年が妥当です。

しかし、それだけでは、契約期間が終了すると秘密情報を自由に取り扱っていいことになってしまいます。
したがって、秘密保持契約の有効期間の条項には、必ず以下のような文言を加えることが必要です。

・本契約終了後も秘密保持義務は存続するものとする。

また、ほとんどのケースでは、以下の条項などについても、契約終了後も有効とする但し書きを入れることが多いです。

  • 返還・破棄
  • 損害賠償・差止め
  • 紛争解決
  • 誠実協議

損害賠償の規定

秘密情報漏えいを抑止するためには、秘密保持契約に違反して秘密情報を漏えいしてしまった場合の罰則規定が欠かせません。

一般的に秘密保持契約に盛り込まれる罰則規定としては、「情報開示者側が違反側に対して損害賠償請求できる」という内容になります。
ただし、実際に秘密情報漏えいが起こった場合を考えると、まず、損害と損害額の立証が現実的には難しいです。

また、訴訟沙汰にすることで手間と時間とコストが無駄に発生してしまいます。
そこで、最も有意義な罰則規定としては、「秘密情報漏えいが起こった場合、〇〇〇円の違約金(または損害賠償金)を払う」といったように、秘密保持契約の中に具体的な賠償金額を定めてしまうのがよいでしょう。

秘密保持契約の注意点

M&Aの交渉相手と秘密保持契約を結ぶ場合の留意点として、社内手続きの側面と契約書作成の観点から、以下の2点を喚起しておきます。

契約書郵送時の注意点

秘密保持にも直結することですが、中小企業がM&Aを行おうとする場合、そもそもM&Aの交渉自体について社内で公になどせず、経営者だけ、あるいは役員など一部の幹部社員が知るだけの状況で進められるものです。

したがって、M&Aに関する資料や秘密保持契約書などの契約書類については、一般社員の目に触れないよう慎重に取り扱わなければなりません。

具体的には、郵送されてくる契約書の開封や社内の捺印手続きを担当する従業員に対して、何らかの配慮をしておく必要があります。
〇〇社の封書は開封せず経営者に手渡す」など、事前に厳密に定めておきましょう。
これを怠ると、通常どおり郵送物を開封した従業員が契約書などを見てしまい、「会社が買収されるかもしれない」と動揺し、周囲にそれを漏らしてしまうかもしれません。

雛形利用時の注意点

昨今、インターネット上には秘密保持契約書のひな形とされるものが多数、出回っています。これは、秘密保持契約書の内容が、ほぼ定型化できていることが理由です。

しかし、ひな形は、あくまでひな形です。
M&Aの秘密保持契約書の場合、一般的な交渉や取引の際に締結される秘密保持契約とは異なった観点が必要であったり、独自の条項を盛り込まなくてはいけなかったりもします。

秘密保持契約書のひな形の中には経済産業省が公開しているものもありますが、官製だからといって安易に信用して、そのまま転用したりすると内容が足りずに後日、トラブルになるかもしれません。
したがって、自社に不利な秘密保持契約書とならないように、M&Aの専門家や弁護士などに契約書の作成依頼をしたり、契約書の内容をチェックしてもらったりすることは、必ず行うべきです。

まとめ

M&Aにおける秘密保持契約の締結

M&Aを進める際には、まず、秘密保持契約の締結が必須です。
秘密保持契約書において、秘密保持の目的、秘密情報の開示範囲、有効期間、損害賠償などを明確に定めましょう。
それらにより、情報漏えいや不正利用のリスクを回避し、安心して交渉を進められます。

また、万が一、情報が漏れたとしても、損害賠償規定により事後対応も万全です。
そして、M&Aに有効で自社に不利とならない秘密保持契約書を締結するためには、信頼できる専門家のサポートが欠かせません。

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