M&Aの優先交渉権とはどんなもの?期間や法的拘束力、独占交渉権との違い
2023.10.13
2023.10.13
M&Aを行うときに、買い手に「優先交渉権」が与えられることがあります。
優先交渉権について、なんとなく言葉からイメージできるものの、内容が正しくわかる人は少ないのではないでしょうか。
本記事では、優先交渉権について詳しく説明します。
気になる適用期間や法的拘束力についても確認しておきましょう。
M&Aを検討している人には、読んでおきたい内容になっています。
Contents
M&Aの優先交渉権とは、どのような権利を指すのでしょうか。
まずは基本事項を説明します。
M&Aでは、1つの売り手に対して多くの買い手候補が現れることがあります。
「優先交渉権」とは、買い手候補が多く存在する場合にそのうちの数社が売り手に対して優先的にM&Aの交渉ができる権利のことです。
仮にほかの候補が後から現れても、優先交渉権を持つ買い手の条件が同等以上のものであれば、売り手は権利を持つ買い手と交渉することになります。
M&Aのプロセスとして中盤に締結する基本合意書のときに、優先交渉権が与えられるのが一般的です。
優先交渉権の期限に、実は法的な制限はありません。
当事者同士で決めることになりますから、合意があれば長期間でも期限を設けることは可能です。
しかし、あまりにも長い期間は売り手にとってリスクになるため、2~3ヵ月を優先交渉権の期間としているケースが多く見られます。
ただし、短く1ヶ月の場合もありますし、長いケースで半年ほど設けられることもあります。
幅があるため、売り手と買い手がきちん交渉して適切な期間を設けることが大切です。
当事者として、優先交渉権に法的拘束力があるかは気になるところです。法的拘束力の有無も確認しておきましょう。
M&Aの優先交渉権は、基本合意書に記載することが一般的です。
基本合意書自体に法的拘束力はありませんが、一部の条項のみ拘束力を持たせることが多い傾向にあります。
また、優先交渉権の違反について、違約金などのペナルティを決める場合もあります。
そもそも、なぜM&Aにおいて優先交渉権の設定が必要なのでしょうか。
前述したようにM&Aでは1つの売り手に対していくつかの買い手候補が現れることが一般的です。
優先交渉権を設けない場合、多くの買い手候補が一斉に交渉することになります。交渉に時間がかかりますし、候補のなかから新たな条件が提示されるたびに自社の条件の見直しが必要になるなど、買い手のコストや労力の負担は大きいものになります。
万が一、コストや労力をかけた上M&Aが成立しなければ、致命的な損失を負うことにもなりかねません。
優先交渉権を一定数の買い手に持たせることでM&Aにおける公平性が保たれ、買い手のリスクを小さくすることができるのです。
M&Aでは「独占交渉権」と呼ばれるものもあります。意味と違いを説明します。
独占交渉権とは、与えられた1社だけがM&Aの交渉を行える権利のことを指します。
当然ながら「独占」ですから、一度独占交渉権を与えてしまうと、売り手は良い条件を提示するほかの企業が現れても交渉できません。
違反してほかの企業と交渉した場合のペナルティが取り決められているケースもあります。
独占交渉権は付与するタイミングにとくに決まりはなく、優先交渉権と同じく基本合意書に記載するのが一般的です。
なお、独占交渉権についても適用期間は2~3ヵ月であることが多い傾向にあります。
独占交渉権では独占的に交渉できますが、優先交渉権ではほかの買い手とも交渉することが可能です。より条件の良い買い手が現れた場合も、交渉できることになるのです。
また、独占交渉権が与えられるのは特定の1社のみに限られますが、対して、優先交渉権は複数社に与えられるという違いもあります。
あくまで「優先」であり、権利が与えられていない企業よりは優先されますが優先交渉権が与えられた買い手同士の間に優劣はありません。
飲食店で提供するメニューは自分で自由に決められます。例えばラーメン屋でうどんを提供したり、イタリアンレストランで中華料理を提供しても何ら問題ありません。業態を問わず、創意工夫を凝らした様々なオリジナルメニューを提供できるのです。もちろん売れなければ意味はありませんが、料理一つでライバル店と差別化できます。飲食店は物販より伸びしろがありますので、アイデア次第では売上を大きく増やせるでしょう。
まずは優先交渉権のメリットを、買い手と売り手それぞれ紹介します。
買い手には、以下の3つのメリットがあります。
買い手候補がたくさんいる場合、優先交渉権を持っていればほかの候補より有利に交渉を進められます。
仮にほかに買い手候補がいなくても、優先交渉権を持っていれば後から候補が現れたときに有利な立場でいられます。
M&Aでは、売り手が有利と言われています。
売り手がより良い条件を求めて、M&Aの交渉が長引いてしまうことは良くあります。
優先交渉権を設けていれば、交渉が長引くことも少なくなるでしょう。スムーズなM&Aが行えます。
売り手の法務や財務を調査するデューデリジェンスには、手間やコストが大きくかかります。
デューデリジェンスを行ったあとにほかの買い手と交渉を始められては、かかった労力も費用も全て無駄になってしまいます。
優先交渉権によって、そういった事態を避けることが可能です。
対して売り手から見たメリットには、以下のものが挙げられます。
優先交渉権は、買い手に安心感を与えることになります。今後の交渉も、友好的に行うことが可能でしょう。
独占交渉権ではなく優先交渉権の場合、ほかの候補を交渉材料に、より良い条件が引き出せる可能性があります。
優先交渉権のデメリットも、しっかり確認しておきましょう。
以下のデメリットがあります。
優先交渉権が複数社に与えることができる以上、ほかの買い手候補と交渉されてしまう可能性があるのは、買い手のデメリットと言えるでしょう。
優先交渉権では独占的な交渉は行えないという点に注意が必要です。
売り手のデメリットは、他の買い手候補との交渉が制限されてしまうことです。また買収価格を下げる提案をされる可能性もあります。
優先交渉権を持つ買い手が、デューデリジェンスなどを理由に買収価格の交渉をしてくることはめずらしくありません。
優先交渉権を得るために、最初だけ良い条件を提示する買い手もなかにはいるのです。
優先交渉権を得るにはスピードも1つの重要な要素です。
M&Aのさまざまな局面での判断には専門的な知識が必要ですから、経験豊富な専門家へサポートを依頼すると安心して交渉を進めることができるでしょう。
しかし、専門家といっても得意分野はさまざまなので、サポート依頼の際には注意が必要です。
当サイトを運営する「税理士法人Bricks&UK」では、税理士・社会保険労務士・司法書士・行政書士など各分野の専門家がチームを組んで連携し合い、M&Aを総合的にサポートします。
M&Aでの優先交渉権の獲得を検討している場合は、ぜひ一度ご相談ください!
この記事の監修M&Aシニアアドバイザー 齊藤 宏介
税理士法人Bricks&UKにて、税務・会計の豊富な経験から事業者の良きパートナーとして活躍。
M&A Stationではアドバイザーの中心的存在として、様々な業種の会社へのM&Aアドバイザリー業務を取り仕切る。
M&A Stationを運営する「税理士法人Bricks&UK」は、顧問契約数2,500社以上、資金繰りをはじめ経営に関するコンサルティングを得意分野とする総合事務所です。
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