自社株買いをすると株価は上がる?メリットや注意点
2023.12.19
2023.12.19
近年、自社株買いを行う企業が評価されています。
最近でも例えばNTTドコモやソフトバンクが自社株買いを行い、投資家から大いに注目を集めました。
このような評価をされている背景に「自社株買いは株価を上昇させる」という仕組みがあります。
本記事では、なぜ自社株買いが株価を上げるのか理由とその他のメリット、実際の買い付けの注意点を紹介します。
Contents
自社株買いとは、企業が発行した株式を自らの資金で買い戻すことを言います。
そもそも株式会社は、株式を発行しています。企業が発行した株式を投資家が購入して活動資金に充てているわけです。
自社株買いとは、それとは反対の動きであるとイメージしてください。企業自身がお金を出して自社の発行した株式を買うのです。
自社株買いでは、すでに流通している株式を買い戻すため発行時の価格ではなく時価で買い戻さなくてはなりません。
もともとは、例外的な場合を除いて原則禁止されていた行為ですが、1994年の商法改正以降は段階的に規制が緩和されていき、2001年の改正によって認められるようになりました。
なお、自社株買いで買い戻した株式は、「金庫株」として扱われるか「消却」されます。
金庫株とは、自社株買いで買い戻した株式を会社で保有し続けることです。
消却は、取締役会決議によって株式を消滅させます。自社で保有し続ける金庫株と違い、消却では発行済株式数を減少させることになります。
自社株買いをすると株価が上がる傾向にあります。ここでは、その理由について説明します。
ROEとは自己資本利益率のことで、会社の資本に対してどれだけ利益を得られたかを示す指標です。
高いほど自己資本に対して高い利益を上げられていることになります。
ROEを求める計算式は以下のとおりです。
「ROE(自己資本利益率)=当期純利益÷自己資本」
自社株買いをすると自己資本が少なくなり、ROEは向上するのが自然です。
それにより利益率が高いと判断され株価上昇につながるのです。
PERは、株価収益率のことです。
株価に対してどれだけ利益を上げたかを判断する指標になります。
PERは会社の利益に対して株価が安いことを意味します。この数値が低いほど「お得な価格」というわけです。
PERは以下の計算式で求められます。
「PER(株価収益率)=株価÷1株当たりの純利益」
計算式のとおりPERを求めるときは、株価を1株当たりの純利益で割ることになります。
自社株買いをして発行済株式数が少なくなれば、自然とPERの数値は下がりためお得な株として投資家からの注目が集まり、結果、株価上昇につながる仕組みです。
PBRとは、株価純資産倍率のことで、会社の純資産に対して株価が何倍になったかを判断する指標です。
PBRは、低いほど株価が割安なことを意味します。
計算式は以下のとおりです。
「PBR(株価純資産倍率)=株価÷1株あたりの純資産」
PBRでは、株価を1株あたりの純資産で割って計算します。1株あたりの純資産は、純資産を発行済株式数で割った値です。
発行済株式数が減ればPBRが低くなり、株価が割安と判断されることで「買い」が集中。株価が上昇するのです。
自社株買いには、株価を上げる以外にもメリットがあります。
例えば以下のメリットがあげられます。
自己株買いをすると敵対的買収の防衛になります。
敵対的買収とは、経営権を獲得するために経営陣や株主からの合意を得ることなく行われる買収を指します。
敵対的買収が行われると、経営陣が退陣させられる場合もあります。
敵対的買収では、企業の株式を市場で買い集めたり株式公開買付けをしたりして不特定多数から株式を一気に集めます。
自社の持株比率が低ければ、市場に流通している株式がいつの間にか買い集められる場合も出てくるでしょう。自社株買いをして流通する株式数を少なくすれば、外部から買い占められる可能性が低くなります。
また、前述したように自社株買いをすると株価は上がる傾向にあります。
株価が上がれば、相場より高額で買収しなければなりません。買収の難易度が高くなり、より買収されにくくなります。
自社株買いで買い戻した株式は、ストックオプションにすることも可能です。
ストックオプションとは、あらかじめ決めた価格で自社の株式を購入できる権利のことを指します。
役員や従業員にこのストックオプションを付与しておけば、企業が成長して株価が上昇したタイミングで自社株を購入し、時価で売却することが可能です。
企業が成長するほど得らえる利益は大きくなりますから、役員や従業員の働くモチベーションにつながります。
ストックオプションの株式の獲得方法に、自社株買いを利用する企業は多くあります。
流通している株式が多いほど、分配しなくてはならない配当金も多くなります。
しかし、自社株に対しては配当金が発生しません。自社株買いをすれば、配当金を節約できることになります。
残った資金は設備投資や新規事業の立ち上げなど、自社の成長拡大に回せます。
多くのメリットがある自社株買いですが、注意点もあります。以下の点に注意してください。
自社株買いを行う場合は、買い付けのルールがありますので注意してください。
上限金額や1日の買い付け数量が定められています。
また、未上場の中小企業においても分配可能額を超えた自社株買いは禁止です。さらに、純資産額が300万円を下回る場合は配当できないことが会社法で定められているため、自社株買いは行えません。
あくまでルールを守ったうえで買い付けを行ってください。
自社株買いは、株価に影響を及ぼします。
あまりにも市場への影響が大きい場合、混乱を招く可能性があるでしょう。
また、自社株買いで買い戻した自己株式には議決権がありません。
一気に自社株買いを行うと、既存株主の間で議決権比率が変わり混乱につながります。
自社株買いでは、さまざまな影響を考慮したうえで取得する割合を見極めることが重要です。
自社株買いは、自己資本を使って行います。手元の資金を使うことになるため、場合によっては資金繰りが悪化することもあります。
自社株買いは株価を上げる効果がありますが、資金に余裕ない場合、却って逆効果になることもあります。
闇雲にではなく計画を練り戦略的に行う姿勢が大切です。
自社株買いには株価を上げる効果もありますし、敵対的買収の防衛やストックオプションの獲得などさまざまなメリットがあります。
また、買い戻した株式をM&Aの対価に利用する方法も実はあります。
近年、国内でもこのM&Aが活発になっています。M&Aには専門的な知識が必要ですから、仲介会社などの外部への依頼が安心でしょう。
ただし専門家と言っても得意不得意はさまざまなので、依頼する場合は注意してください。
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この記事の監修M&Aアドバイザー 永井 拓海
税理士法人Bricks&UKにて、会社設立や創業融資などスタートアップの支援を数多く担当。
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