【M&A最新動向】教育・学習支援業界のM&Aについて
2023.5.19
2023.5.19
近年、日本国内では少子高齢化が叫ばれて久しく、学生数は年々減少しています。
その一方で、進学率が上がり学習塾や予備校のニーズはわずかに上昇傾向。それを受けて、教育・学習支援業界ではM&Aの動きが活発になっています。
M&Aを成功させるには、最近の動向に加えメリット、デメリットを把握しておくことが欠かせません。
本記事では教育・学習支援業界のM&A最新動向について解説します。M&Aを検討している方はぜひ参考にしてください。
Contents
まず、教育・学習支援業界の定義を確認しておきましょう。
総務省の日本標準産業分類には、「学校教育を行う事業所,学校教育の支援活動を行う事業所,学校教育を除く組織的な教育活動を行う事業所,学校教育の補習教育を行う事業所及び教養,技能,技術などを教授する事業所が分類される」とあります。
一般的に「教育・学習支援業界」というとイメージされやすいのが学習塾ですが、学習塾もここに分類されます。
学習塾の大手企業としては、ベネッセ、学研、ヒューマンアカデミーの3社が挙げられます。
教育・学習支援業界は、進学塾などの学生向けや、語学教室などキャリアアップを目的とした社会人向けなどニーズで大別されます。
さらに個別指導か集団指導かでも分けられますが、個々のレベルに合わせた個別指導のニーズが高まっているのが現在の動きであり、個別指導を導入する企業が多くなっています。
また、2020年度の大学入試改革や次期学習指導要領の改訂などに伴い、さまざまな変化が求められてる中で、少子化から子ども一人にかける教育費は拡大。より質の高いサービスが求められてるのが現状です。
少子化ではあるものの進学率の上昇から、業界全体での生徒数は増加していますし、子どもが成人するまでに関わる教育サービスにおいては、学習塾への投資額が多くなっている傾向が見られます。
その分、業界内での競争は年々激化。生徒獲得のための広告宣伝費が増加している影響から、資本力に余裕のある大手学習塾フランチャイズが、個人経営塾にとって代わるなど、業界再編の動きが加速しています。
ほかにもニーズが高まっている理由として、以下の点があげられます。
2020年、新型コロナウィルスの感染拡大で一時落ち込みましたが、その後は回復の動きです。競争の激化が続いています。
ここまで、教育・学習支援業界の定義や市場環境についてみてきました。次に、近年の教育・学習支援業界のM&Aの動向について解説します。
最近は、学習塾と異業種企業間でのM&Aが活発化しています。
一から新たに学習塾を運営するには、設備投資や講師の確保をしなければならず、どうしても手間やコストがかかるものです。
しかし、すでに運営している学習塾を買収すれば、設備や人材をそのまま取り入れられ迅速な事業展開が可能です。
生徒も確保できているため最初から安定した運営ができますし、集客にかける広告費用も省けます。
ノウハウや新しいサービスも確保でき、大きなシナジーが期待できることも、異業種によるM&Aが増加している理由の1つです。
少子化による競争の激化や多様化するニーズ、教育制度改革への対抗策として、学習塾同士でのM&Aが加速しています。
学習塾同士でM&Aを行えば、エリアが拡大し事業を大きく発展できます。
競争激化から今の学習塾には高いサービスが求められるわけですが、それぞれの持つノウハウやサービスを相互に活かすことで、サービス向上も見込めます。
これらの理由から、事業エリア拡大やサービス向上を目的にした同業でのM&Aが目立つ傾向にあり、業界再編の動きが進んでいます。
ここで、教育・学習支援業界におけるM&Aのメリットを紹介します。買い手側と売り手側、それぞれについて見ていきましょう。
買い手側のメリットには、代表的なものとして以下があげられます。
まず買い手側のメリットの1つとして、エリア拡大や生徒数の増加があげられます。
教育・学習支援業は、生徒が増えれば増えるほど利益につながる事業です。
買収して一定数の生徒をまとめて増やせば、事業を急速に拡大させることも可能になります。
M&Aでは、人材も引き継ぐことになります。学習塾において合格実績や指導レベルは評価の大部分を占める重要な要素と言えます。
買収する学習塾に優秀な従業員や講師がいれば、そのままその人材を獲得できるわけです。
また、独自のノウハウや最先端のサービスをもつ企業を買収できれば、それらを一挙に獲得できる可能性があります。
自前で開発する手間やコストをかけることなく、より質の高いサービス提供が可能になるでしょう。
新規参入が短期間で行えるのも大きなメリットです。
業界への新規参入した際、世間の評価を得て経営が軌道に乗るまでにある程度時間がかかるのが一般的です。
しかし、運営している学習塾を買収すれば、異業種からでもすぐに事業が始められます。
運営に必要なノウハウや設備・教材も最初から揃うことになりますから、短縮できる時間は大きいでしょう。言い換えるなら「M&Aで時間を買う」というイメージです。
加えて、すでに抱えている生徒も引き継げるため、生徒募集のコストを掛けることなく最初から安定した経営が可能になります。
対する売り手側のメリットは、以下のとおりです。
これまで通り運営が続けられることから、生徒の学習環境をそのまま残せます。
生徒が転塾する必要がないため、モチベーションも維持できるでしょう。急な学習方針の変更によって、学力が低下することもありません。
経営者として、これまで通ってくれていた生徒には責任を感じるものです。生徒にこれまで通りサービスを提供できるのは、経営者にとって大きなメリットでしょう。
個人保証とは、金融機関などから融資を受ける際に、経営者自身が連帯保証人になることです。個人保証をすると、仮に会社が倒産して融資を返済できなくなった場合、経営者個人が借りたお金を返済しなければなりません。
金融機関からの資金調達を円滑にするため、個人保証を行っている学習塾の経営者は少なくないでしょう。
資金力のある会社にM&Aで売却すれば、安心して個人保証や担保などを引き継げます。
教育・学習支援業界では大手ほど事業規模の大きさから、独自ノウハウや高い技術を持っている傾向にあります。
M&Aでより大きな企業の傘下に入れば、それらを活用してこれまで行えなかった授業も行えるようになることから、売り手側は生徒に提供するサービスの向上が期待できます。
教育・学習支援業界でのM&Aには多くのメリットがありますが、実際にM&Aを成功させるにはデメリットを把握しておくことも必要です。
デメリットもしっかり確認しておきましょう。
知っておきたい買い手側のデメリットは以下のとおりです。
簿外債務とは、貸借対照表に計上されていない債務を指します。損害賠償金などによって、簿外債務が高額になるケースもめずらしくありません。
M&Aでは債務も引き継ぐため、簿外債務も買い手側が負うことになります。
簿外債務を引き継いだばかりに想定以上にコストがかかり、M&Aが失敗に終わってしまうケースがあります。
どの業界のM&Aでも言えることですが、反感や不信感から人材が流出することがあります。
場合によっては優秀な講師が流出し、計画していた授業が行えなくなる可能性もあるでしょう。
講師が流出してしまったら、新たに人材を確保しなければなりません。
学習塾における人件費は上昇傾向であり、人材確保には大きなコストがかかることが予想されます。
待遇や職場環境に従業員が納得せず、効率的に業務が進まなくなるケースもあります。
そのため、M&Aでは人事労務面の統合にとくに注意が必要です。
M&A自体は国が後押ししているものの、残念ながら人事労務面での専門的な支援は現在のところ不足している状況です。
少ない支援のなかで難しい人事労務面の統合を成功させなければならないのは、デメリットの1つと言えるでしょう。
売り手側が留意しておきたいデメリットには、以下のものがあります。
M&Aにおいて、買い手側を探すのは決して簡単ではありません。数ある企業から買い手を探すのは限界があり、途中でM&Aを断念してしまうケースもあります。
もっとも、仲介会社や専門家を利用すれば独自のネットワークを活かして買い手を探してくれるので、このデメリットを避けられる可能性は高くなるでしょう。
また、二束三文でも売却できれば良いという考えでない限り、出来るだけ高値で買って欲しいという経営者がほとんどです。
より良い買い手を探すためには、自社の企業価値を高める努力をしなければいけません。
オーナーが変わることで環境や雇用条件が変化する可能性のあるM&Aは、従業員や講師から喜ばれないケースもあります。
M&Aのあと、反感を持った従業員や講師が離職してしまう…というのは良くある話です。
また、M&Aが成立する前に従業員や講師に知られてしまい、不安になって離職するケースも見られます。
ともすれば、うわさが生徒や保護者に伝わり生徒まで離れてしまう可能性も考えられるでしょう。
ここで、教育・学習支援業界でM&Aを行う場合の注意点を解説します。M&Aを実行するときは、以下の点に注意してください。
M&Aの前に、人事労務管理の体制を整えておきましょう。
M&Aのあと業務を効率的に行えるよう、残業代や有給取得など整理しておくことが大切です。
また、労働関連の法令は毎年のように改正されています。
就業規則など作成した時代の古いままでは、現行法に照らし合わせると法令違反になっている可能性もありますから、専門家に依頼してしっかり確認しておくと安心でしょう。
経営統合後の組織が上手く機能しないことは、M&Aの失敗としてよくあります。
特に中小企業では業務や組織体制が属人化している傾向が強く、オーナー社長が交代したことにより経営状態が激変してしまう事例も少なくありません。
M&Aの前に経営者同士で良く取り決め、現オーナーが引退しても組織として機能するようにしましょう。
経営理念や業務プロセス、マニュアルなどを整備してあらかじめ備えておく必要があります。
M&Aにおいて、タイミングは非常に重要です。近年のコロナ禍のように、まったく予測し得ない社会情勢の変化によって、相手を失ってしまう場合があります。
条件交渉が長引き、買い手側の意欲がなくなってしまうこともあるでしょう。
ただし、タイミングを見極めるのは非常に難しいため、自己の判断だけに頼らず、M&Aの経験を豊富にもった専門家に相談するのがおすすめです。
場合によってはセカンドオピニオンとして、複数の専門家にアドバイスを求めるのも良いでしょう。
デューデリジェンスなどへの対応を含め、総合的にM&Aをサポートする体制が備わっているのがM&A Stationです。
進行中のM&A案件に関するセカンドオピニオンも承っております。お気軽にご相談くださいませ。
教育・学習支援業界のM&Aには、気を付けなければいけないデメリットや注意点も多くあり、自力で進めるのには限界があります。
M&Aのノウハウを多く持つM&A Stationなら、専門的な知見をご提供できます。
国の認定を受けた支援機関(認定経営革新等支援機関)である「税理士法人Bricks&UK」が、M&Aの交渉・手続き面のサポートだけでなく、資金調達サポートや事業計画書の無料診断などにもお力添えしております。
教育・学習支援業界でのM&Aを検討されている方は、ぜひお問い合わせください。
この記事の監修M&Aシニアアドバイザー 齊藤 宏介
税理士法人Bricks&UKにて、税務・会計の豊富な経験から事業者の良きパートナーとして活躍。
M&A Stationではアドバイザーの中心的存在として、様々な業種の会社へのM&Aアドバイザリー業務を取り仕切る。
M&Aを成功させるための要点のひとつに「デューデリジェンス」が挙げられます。
買収対象企業の分析・評価のために実行されるもので、ここでリスクを見落としてしまうと後々取り返しがつかない危険性があります。
ただ、調査項目は多岐に渡り高度な専門知識が必要とされ、いざ必要な場面でどこに依頼すればいいか分からない方も少なくないでしょう。
多くのM&A仲介会社の業務範囲は、文字どおり「仲介」まで。デューデリジェンスに関しては、改めて依頼先を探さなければいけません。
M&A Stationを運営する「税理士法人Bricks&UK」では、グループとして税理士、社会保険労務士、司法書士、M&Aアドバイザーが在籍しており、本来であれば個別に依頼が必要なデューデリジェンスもワンストップ対応が可能です。
デューデリジェンスもM&A Stationにおまかせください!
M&A Stationでは、豊富な案件からスムーズなマッチングを実現。
効率的な資金調達や、財務・税務・ビジネス・法務・人事、あらゆるDD(デューデリジェンス)を自社内で一括で行うなど、 買収や合併後、制度面や業務面でのスピーディな統合を実現し、シナジー効果の獲得に直結するM&Aを支援いたします。
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