こんな買収は失敗する!?知っておきたい事例3つ
2021.4.23
2021.4.23
企業買収は決して簡単ではありません。
残念なことですが全ての企業買収が必ずしも成功するわけではなく、買い手・売り手双方の良さを潰し合い、結果として買収が失敗に終わってしまうこともあります。
場合によっては買収資金の返済や償却負担が重くなり、資金繰りが悪化し融資も止まり最悪の事態に陥ることも考えられます。
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近年、国内におけるM&Aの件数は右肩上がりに増加を続けており、2019年には4,000件を突破しました。
経営者の高齢化や人口減少による中小企業の後継者不在問題などを背景に、政府もM&Aを後押しする政策方針を打ち出しており、今後もこの傾向は変わらないと予想されます。
そもそも、M&Aの成功率はどれくらいなのでしょうか?
デロイト トーマツ コンサルティング株式会社の「M&A経験企業にみるM&A実態調査(2013年)」によれば、約8割の企業が「M&Aの目標達成率80%超を成功基準」と設定しているにも関わらず、基準を達成している企業は36%に留まるという結果がでています。
つまり、実に6割以上の企業が「M&Aに失敗した」という認識ということになります。
日本経済新聞によると、海外企業同士の場合でも成功とする企業は約50%との事ですので、日本企業だけが特別低い水準というわけではありませんが、それを鑑みても36%という数字は芳しくない結果ではないでしょうか。
そのような事態に陥ってしまう事業買収は、一体どこに原因があるのでしょうか?
今回は、買い手側が事前に知っておきたい事業譲渡の失敗事例3つを解説いたします。
M&Aとはあくまで目的達成のためのひとつの手段に過ぎません。
実際には「事業を拡大したい」「事業承継したい」「新規事業を取得したい」など、M&Aを行う目的が存在するはずです。
目的が曖昧なままM&Aを進めると、企業買収することが「ゴールである」という目的と手段のすり替わりが起こりがちです。
そうなれば当然、希望どおりの結果を得ることはできないでしょう。
なんのためのM&Aか、まず目的を明確にしてから企業買収を進める戦略的視点が重要です。
M&Aのデューデリジェンス(DD)とは、売り手企業の財務状況やコンプライアンスの状況調査を指します。
この調査が不十分だったため、簿外債務の見落としや適切な範囲を超えた価格設定など想定外の事態に陥るケースが考えられます。
デューデリジェンス(DD)の費用は決して安いものではありませんが、それを行わないでいると後々都合の悪い事実が発覚しても対処しきれない場合があります。
M&A成立後の統合プロセスのことをPMIと言います。
異なる経営方針や文化、業務ルール、社員の意識の融合をスムーズに実現することが目的ですが、PMIがうまく行えなければM&Aは失敗となります。
業務面・意識面で円滑な融合ができるよう、入念にPMIに取り組むようにしましょう。
スモールM&Aの買収対象となる事業は数百万円から大きくても数億円程の事業規模です。
年商でイメージすると1千万円~数億円、月額の売上で100万円~3,000万円といったレンジが売買のボリュームゾーンと言えるでしょう。
この事業規模であれば従業員は数人~数十人の組織であることが多く、そのため多くのケースでは代表取締役の影響力が極めて大きいことが通常です。
このような事業を承継する場合、代表取締役の属人的な能力で運営されている要素を差し引き、後に何が残るのか十分に見極め事業承継を実行しなければなりません。
言い換えれば、買収の目的をピンポイントに絞ることが必須ポイントと言えるでしょう。
具体的な例として、とある食品大手のM&Aでは、新たな地域に進出し販路を広げる場合、必ずその地域の小さな食品メーカーを吸収合併し、そこを足がかりに地域に根付いていくことを成長戦略としていました。
これは食の好みは地域差が大きく、画一的な調味では地域に浸透することが出来ないための戦略です。
この場合は必ずしも代表取締役の属人的な能力を必要とせず、むしろ現場スタッフのノウハウや知識の確保が買収の主な目的と言えますので、代表者を失うことで事業買収が失敗に終わる可能性は低いと言えます。
一方で、産業用機械の修理専業といった、ある業界に特化した極めてニッチで職人的な技量を強みとするような町工場を買収する場合、実務は社長や幹部の能力にほぼ100%依存して事業が回っていることが予想されます。
土地・建物や設備など保有する有形固定資産が大きく、買収金額も大きくなる事が想定されますので、これら資産の取得や活用を目的としたM&Aであれば良いかもしれませんが、事業も十分に承継できることを前提に事業予測を立てなければ、極めて厳しいものになるでしょう。
スモールM&Aでは、買収の目的はピンポイントで明確にすることが、失敗しないための大きな判断のポイントです。
一般的に従業員が10名以下の事業を買収する際は余り問題になりませんが、数十人規模の事業を買収する場合、企業文化の違いについても考慮する必要が出てきます。
特に飲食や接客など、普段から多くの顧客と接する事業では、企業文化の違いについていけない社員が出てくる傾向があります。
少し大きなお話をしますと、 徹底したお客様第一主義で、顧客満足の世界No.1企業となった「絶対にノーと言わない百貨店」で有名なアメリカのノードストローム。
お客様の要望に絶対ノーと言わないという企業文化を持ち、一定の金額以内であれば従業員個人の裁量でお客様の要望に応えるため出費をする権限まで与えられています。
このような企業文化をもつ従業員が、比較的従業員の裁量に様々な統制を取る必要があるアーリーステージの企業で仕事をすることになれば、恐らく馴染めない可能性が高いです。
同様に、自社と事業規模が異なる会社を買収する際には、事業規模の違いだけでも既に企業文化が異なることがあり、新しい戦力として組織に馴染むには従業員にはそれだけで大きなストレスが発生することでしょう。
トップダウンの傾向が強い会社であれば、社員の自律的な行動はなかなか期待できません。
反対に従業員の裁量を重んじる会社であれば、新しい仕組みやルールに反発を感じることもあります。
企業文化が大きく異なる他社を買収し、その従業員を自社の組織再編として吸収するのであれば、その教育が大きな負担とリスクになることを想定しておくことも重要な要素になります。
M&A案件の中には、経営不振から事業の売却を考え市場に出てくる案件もありますが、経営不振の状態であれば多くの場合、給与も世間水準から低く、休日・休暇も法定基準の最低限ということも少なくありません。
このような会社では、社長や経営陣に対する不満が積もり、ネガティブなエネルギーが組織全体の活気を奪い負のスパイラルに陥っていることも予想できます。
では、このような会社の買収は失敗する可能性が高いのでしょうか?
結論から申し上げますと、対応次第でむしろ事業承継がうまくいく可能性が高いと言えるでしょう。
経営不振に悩む会社は活気を失い、新しいことにチャレンジする機会も、新しい知識や技術を身に付ける機会にも恵まれず、従業員は日々の仕事のことしか考えられない状態に陥っていることがほとんどです。
このような状況では特に若い社員には耐えられず、離職を考えていることもあるでしょう。
従業員が既に仕事をすることを諦めていれば、そのリハビリは厳しいかもしれません。
しかし買収後にして欲しいこと、どれほど新しい仲間に期待しているかを友好的に経営者が説明し、その言葉に従業員の目線が上を向いてくるようであれば、むしろ新しい社長への期待と帰属意識が高まり、求心力を得られる可能性が高くなってきます。
また、求心力とカリスマで組織をまとめてきた社長の引退の場合、新しい経営者への求心力を高める事は容易ではありませんが、従業員の心がまだ折れてなければ経営不振に陥っている事業でも成長・拡大の余地があり、買収を検討する価値は十分あると言えるでしょう。
企業買収で失敗しないための注意点について説明します。
M&Aはあくまで企業戦略の一手段にすぎません。
そのM&Aによって、具体的にどのようなシナジー効果が生じて自社にはどのようなメリットがあるのか、といった点を明確に把握・理解して、なんのためにM&Aを実施するのか「目的意識」をはっきりしておくことが重要です。
例えば、
自社の弱点である営業力を補強するために、営業力の高い企業を買収して売上高を伸ばしたい。
新しい事業に参入するために、企業買収でノウハウや人材を一挙に獲得したい。
というような目的です。
この目的がしっかりと定まっていないと、買収候補企業の絞り込みの段階で議論百出となってしまい、なかなか絞り込み作業が進まず、他の企業に先に買収されてしまうかもしれません。
また、明確な企業買収目的を経営陣で共有しておくことで、余計な作業などを実施することなく、一枚岩で買収に向かって一直線に進むことが可能になります。
買収後に簿外債務が見つかった場合には、一般的には、買い手企業側が責任を持って対応しなければなりません。
簿外債務の状況によっては、想定外に巨額の負担をしなければならないような可能性もあります。
したがってデューデリジェンスの段階で、公認会計士などの専門家を活用して詳細に財務状況などを精査することが必須になります。
場合によっては、今回のM&Aの話が出る前に退職した財務経理部門のメンバーがいたのであれば、その人に会って退職理由などを確認する、といったことも必要かもしれません。
また、買収実施後に簿外債務が発覚した場合の補償をきちんと最終契約書に明記しておくことも必要です。
売り手側企業の売却理由を、きちんと確認して精査しなければなりません。
表向きは会社の後継者が不在なので、このタイミングで会社を引き継いでくれる企業に売却したいとしているようなケースであっても、実際は訴訟を提起されそうなトラブルを抱えているようなことも考えられます。
もちろん、前述のデューデリジェンスをしっかりと実施することで多くのリスクや課題は見つかることにはなりますが、潜在的なリスク(上記のような提訴リスクなど)や意図的に隠された債務までは必ずしも見つけられるとは限りません。
こうしたリスクを避けるために、表明保障や誓約事項などを最終契約書に記載しておくことは買い手側企業にとっては非常に有用だと考えられるのです。
M&A実施後のPMIには、十分な時間をかけて慎重に進める必要がある点には注意してください。
M&Aを本当の意味で成功させるためには、PMIにおける統合作業が極めて重要になります。
拙速に統合作業を進めてしまって、その結果として双方の従業員とも納得していないような人事制度や人事評価制度が導入されてしまっていたら、多くの社員の働くモチベーションは低くなってしまうので、M&Aのシナジー効果を発揮することも難しくなってしまうでしょう。
数回にわたって新しい人事制度の説明会を実施や、今回のM&Aの目的を社長自身や経営陣のメンバーが直接的に従業員に対して訴えたり説明することで、PMIに関する作業もスムーズに進むと思われます。
M&Aでは、事業、財務、税務、会計、法務、人事、労務、IT、など様々な分野にわたる経験やスキルが必要になります。
したがって、多くのM&A案件に携わって豊富な経験やスキルを有しているM&Aアドバイザーのサポートは必要不可欠です。
M&Aアドバイザーによっては、特定の業界や業種を得意としている会社や大企業やベンチャー企業などの企業規模を問わず案件を取り扱っている会社など、会社よって様々な特色があります。
単に報酬額の多寡のみでM&Aアドバイザーを選ぶのではなく、こうした会社ごとの特色や第三者からの評価や評判なども踏まえて、自社にとって本当に有益と思われるM&Aアドバイザーを選ぶことがとても重要です。
M&A Stationを運営する「税理士法人Bricks&UK」は、顧問契約数2,100社以上、資金繰りをはじめ経営に関するコンサルティングを得意分野とする総合事務所です。
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