M&Aによる事業承継とは?買い手のメリット、デメリットは?
2023.10.30
2023.10.30
近年、国内では経営者の高齢化が進み、特に中小企業においては「後継者不在」が大きな課題としてのしかかっています。
かつては会社を引き継ぐときには親族を後継者にすることが一般的でした。しかし前述の通り引き継ぐ人材不足を補うため、現在ではM&Aを活用した第三者への事業承継も増加傾向です。
本記事では、M&Aによる事業承継について解説します。買い手側の視点から、メリット・デメリットも見ていきましょう。
Contents
まずは事業承継について、基礎知識を説明します。
事業承継とは、会社の事業を現経営者から後継者に引き継ぐことです。
事業承継は後継者の立場によって、以下の3種類に分かれます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
親族内承継とは、言葉からもイメージできるように経営者の親族を後継者とする事業承継のことです。
親族には子ども、配偶者、兄弟姉妹、甥姪、子どもの配偶者などが該当します。
従来、日本では親族内承継による引き継ぎが多く行われてきました。中でも最も多かったのが子どもへの承継です。
しかし子どもに引き継ぐ意思がなかったり、適性を備えていなかったりする場合も多くあり、子どもへ引き継ぎは減少傾向です。
加えて、少子化も親族内承継を少なくさせている大きな要因となっています。
親族以外に会社を引き継ぐことを、親族外承継と言います。代表格としては自社の従業員でしょう。
親族外承継であれば、後継者としての適性を良く見て決断することが可能です。
しかし、社内外の関係者から理解を得られるか、そもそも適任者に株式を買い取る資金力があるかなど一定の課題もあります。
M&Aとは会社の買収・合併のことを指します。
会社を売却して、買い手が新たな経営者になるのがM&Aを活用した第三者への承継です。
社内外のつながりに左右されないため、幅広い候補のなかから有能な後継者を選ぶことが可能になります。
また、事業や会社を売却することで現経営者が資金を得られるメリットもあります。老後の資金に充てることもできるでしょう。
事業承継では、以下の3つが後継者に引き継がれます。
まず経営全体が後継者に引き継がれます。
また、財産として不動産などの事業資産を運転資金とともに引き継ぐ必要があります。
非事業資産も引き継がなくてはなりません。
非事業資産とは、会社の資産のうち事業活動に使用されない資産を指し、株式のほかに有価証券などがあげられます。さらに無形財産も引き継ぎます。
無形財産には、特許、ノウハウ、ブランドなどが含まれます。
事業承継では、M&Aを活用して第三者に承継する方法があることは前述したとおりです。
M&Aについても、くわしく確認しておきましょう。
くり返しになりますが、M&Aとは会社の買収・合併を指します。
2社以上の会社が合わさって法的に1つの会社になるのが合併です。一方、買収とはほかの会社を買い取ること。
近年、中小企業を中心に後継者問題を抱える企業が多くなっています。
この「後継者不在」への対応策としてM&Aを活用した事業承継が注目されており、年々件数が増加しているのです。
M&Aで事業承継するメリット・デメリットは何でしょうか。まず、M&Aで事業承継する買い手のメリットを紹介します。
以下のメリットが考えられます。
M&Aで事業承継することによって、売り手の持っていた資産を活用して事業拡大することができるでしょう。
例えば生産設備を獲得できれば、生産量の増加につながります。生産量の増加により製品の生産コストが下げられれば、利益が今より増える可能性があります。
また、M&Aによって生まれるシナジー効果も事業を拡大させてくれます。M&Aのシナジー効果とは、2社以上の会社が合わさることで得られる相乗効果を指します。
M&Aでは、売り手の人材もそのまま引き継ぐことが可能です。
有能な人材が獲得でき、これまで実現できなかった新しい計画に挑戦できるかもしれません。
人材を育成するにはコストがかかるものですが、技術やノウハウをすでに持っているわけですから、そのコストも削減できます。
また、売り手が持つ取引先や顧客を獲得できるのもメリットです。同業種だけではなく異業種からM&Aでの事業承継を利用して新規参入する場合もあるでしょう。
新規参入では取引先や顧客を確保するのに一定の時間がかかります。
売り手が持つ既存の取引先や顧客を獲得できることで、早い段階で事業を軌道に乗せることができます。
どの会社にも、これまで培ってきたノウハウがあるものです。M&Aで事業承継すれば、売り手が持つノウハウも獲得できます。これまでになかった商品を作ることも可能でしょう。
これまで保有していなかったノウハウを獲得したことでサービスが向上し、従来よりも利益が増加する可能性もあります。
前述したように、M&Aで事業承継すると買い手に多くのメリットがありますが。しかし、デメリットもあるため理解しておかなくてはなりません。
デメリットは以下のとおりです。
簿外債務が見つかる可能性がある、経営統合が上手くいかず損失になることも、人材・取引先・顧客が離反する可能性がある
どのM&Aにも、簿外債務のリスクがあるものです。
簿外債務とは、貸借対照表に計上されていない債務のことを指します。この簿外債務を引き継いでしまうと予想外のコストがかかります。当初に想定していなかった大きな損失を生む可能性があるでしょう。
簿外債務の引き継ぎを避けるには、売り手の財務や法務について調査するデューデリジェンスが欠かせません。
正確な調査を行うには、M&A仲介会社など専門家への依頼が安心です。
M&Aを成功させるための要点のひとつに「デューデリジェンス」が挙げられます。
買収対象企業の分析・評価のために実行されるもので、ここでリスクを見落としてしまうと後々取り返しがつかない危険性があります。
ただ、調査項目は多岐に渡り高度な専門知識が必要とされ、いざ必要な場面でどこに依頼すればいいか分からない方も少なくないでしょう。
多くのM&A仲介会社の業務範囲は、文字どおり「仲介」まで。デューデリジェンスに関しては、改めて依頼先を探さなければいけません。
M&A Stationを運営する「税理士法人Bricks&UK」では、グループとして税理士、社会保険労務士、司法書士、M&Aアドバイザーが在籍しており、本来であれば個別に依頼が必要なデューデリジェンスもワンストップ対応が可能です。
デューデリジェンスもM&A Stationにおまかせください!
M&Aでは、経営理念や業務方法を統一する経営統合プロセスが必要です。
スムーズに経営統合できるかは、M&A自体の成功の鍵を握っていると言っても過言ではありません。
実際にM&A実施後の経営統合が上手くいかず、期待したシナジー効果が得られないなど損失になってしまうケースは決して少なくありません。
M&Aの成功は実施後の統合プロセスにかかっていると言っても過言ではないのです。
人材や取引先、顧客が獲得できることもM&Aによる事業承継のメリットだと前述しました。
しかしM&A成立後、それらが離反してしまう可能性もあるので注意しなければなりません。
特に中小企業などは経営者などの「属人性」に依存している場合も多く、経営者が変わることを従業員が否定的に感じるケースもあり最悪の場合、新たな経営者に反発して退職してしまう場合も想定されます。
社内でも重要なポジションを占めるキーパーソンが退職してしまい、予定していた計画が実現できないこともあるでしょう。
このような事態を避けるためには、M&Aへの理解を得られるよう従業員への細やかな配慮が必要です。
また、前任の経営者と取引先や顧客との関係性が強い場合、経営者が変わることで取引先や顧客が離れてしまう可能性もあります。
後継者不在の問題が目立つ現在、M&Aで事業承継したいと考える経営者は少なくないと見られます。
M&Aで事業承継すると、買い手には多くのメリットがあります。
しかし簿外債務の発覚や経営統合プロセスの失敗、人材の離反などデメリットには注意しなければなりません。
デメリットを避けるには、M&A実施後のPMIに詳しい専門家への依頼が安心でしょう。ただ、専門家といっても得意分野はさまざまなので依頼先選びには注意が必要です。
当サイトを運営する「税理士法人Bricks&UK」ではグループ内に社会保険労務士事務所を開設しており、人事・労務面からもM&A後の統合プロセスを総合的にサポート可能です。
ぜひ一度お問い合わせください!
この記事の監修M&Aシニアアドバイザー 齊藤 宏介
税理士法人Bricks&UKにて、税務・会計の豊富な経験から事業者の良きパートナーとして活躍。
M&A Stationではアドバイザーの中心的存在として、様々な業種の会社へのM&Aアドバイザリー業務を取り仕切る。
昨今、中小企業にとって経営者の高齢化と後継者不在が深刻な問題となっています。
そんな中、中小企業庁が2017年7月に打ち出した、事業承継支援を集中的に実施する「事業承継5ヶ年計画」を皮切りに、中小企業の経営資源の引継ぎを後押しする「事業承継補助金」の運用、経営・幹部人材の派遣、M&Aマッチング支援など、円滑な事業承継に向けたサポートが実施され、国を挙げて後継者問題の解消を後押しする機運が高まってきました。
引退を検討している経営者の方はもちろん、まだ引退を考えていない方も事前に事業承継の知識を蓄えておけば、より円滑に事業承継を進めることができるでしょう。
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