EBITDAとは?計算方法、活用の仕方などを解説
2022.5.17
2022.5.17
財務分析指標の一つとして「EBITDA」と呼ばれるものがあります。
EBITDAは、企業価値を評価することが必要になってくる「M&A」では特に重要な指標です。
しかし、あまり馴染みのない言葉なので、「どのように算出するのか?」「営業利益とは違うのか?」などの疑問を持つ人も多いようです。
本記事では、計算方法や営業利益との違い、EBITDAを使用するメリット・デメリットなど詳しく説明していきます。
Contents
EBITDAとは財務分析指標のひとつで、「企業の本来の稼ぐ力」「収益力」を知ることができるもの。
「イービットディーエー」「イービッタ」「イービットダー」「エビータ」など、さまざまな読み方があります。
EBITDA は「Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization」の略語ですが、分解して和訳すると次のような意味になります。
Earning(利益)
Before(前)
Interest(金利)
Taxes(税)
Depreciation(有形固定資産の減価償却費:建物や設備など)
Amortization(無形固定資産の減価償却費:のれんやソフトウェアなど)
もともとの「Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization」を順番に訳すと、「利益」「前」「金利」「税」「償却費」になることが前章からわかります。
これをわかりやすく日本語にすると、「金利と税と償却費を差し引く前の利益」となることから、EBITDA は日本語では「償却前営業利益」と呼ばれています。
企業の本来の稼ぐ力がわかるEBITDAですが、どのような活用方法があるでしょうか。
EBITDAの代表的な活用方法を紹介します。
融資をする場合、銀行は利息も含めて貸した分のお金を回収しなければなりません。
返済できるだけの利益があるかも重要ですし、固定資産よりも、現金での収益があるかがポイントになってきます。
EBITDAでは、どれだけ利益があるか確認できるうえに、現金ベースの指標ですので、現金での収益の大きさを把握することができます。
これなら返済できるか判断がしやすいでしょう。
M&AでもEBITDAはよく使われます。
企業評価ができますし、複数の案件がある場合でも、EBITDAを使うことで比較がしやすくなります。
また、相手企業のEBITDAを知れば、何年で投資金額が回収できるかも推測可能です。
例えば買収時に10億円の投資をしたとして、相手企業のEBITDAが3億円であれば、4年目からM&Aの投資金額を回収できることになります。
EBITDAは、個人投資家の判断材料としても活用される数値です。
営業利益は一時的な設備投資の影響を受けがちですから、大規模な先行投資が必要な企業では、設備投資をしたあとの数年間は利益が小さくなってしまいます。
営業利益だけでは中長期的な評価が難しくなりますが、減価償却費の影響を受けないEBITDAであれば、中長期的な視点で企業の価値を知ることができます。
EBITDAの計算方法はいくつかあります。まずはわかりやすい計算方法から紹介します。
営業利益から計算する
EBITDA=営業利益+減価償却費
営業利益は支払利息や税金が差し引かれる前の数字ですが、この営業利益に減価償却費を足すことでEBITDAを求めることができます。
経常利益から計算する
EBITDA=経常利益+支払利息+減価償却費
経常利益に支払利息を足し、減価償却費を加えることでもEBITDAは求められます。
どちらの式で計算してもほぼ同じ数字になりますが、M&Aで企業を比較する場合、同じ式で計算しておくと安心です。
また、以下の式でもEBITDAは求められますので、参考にしてください。
EBITDA=税引前当期純利益+特別損益+減価償却費
EBITDA=当期純利益+法人税等+特別損益+支払利息+減価償却費
合わせて「EBITDAマージン」という用語も確認しておきましょう。
EBITDAマージンとは、売上に占めるEBITDAの割合のことで、EBITDAと同じように企業の稼ぐ力を知る目安になります。
以下の計算式で求められます。
EBITDAマージン=EBITDA÷売上高
売上高が同じでも、EBITDAマージンが違う場合もありますので注意してください。
EBITDAマージンを大きくするには、「経費をそのままにして売上高を増やす」「同じ売上高で経費を減らす」ことが必要です。
ここで、EBITDAの計算に使われる用語についてあらためておさらいしておきましょう。
まず確認しておきたいのが営業利益です。営業利益とは、企業が本業で稼いだ利益のことを指します。
「売上高」から「売上原価」を引き、さらに「販売費及び一般管理費」の項目を引いたものが営業利益です。
企業が通常行っている事業全体から稼いだ利益が経常利益です。
営業利益に受取利息などの「営業外収益」を足し、そこから「営業外費用」を引いて求めることができます。
本業だけの利益を指す営業利益に対して、経常利益には本業以外の利益も含まれています。
純利益とは、企業の最終的な利益のことで、純粋な成果を表すものです。
臨時的な収益や費用も足し引きしますし、法人税も引きます。「税引後利益」や「当期純利益」とも呼ばれています。
資産のなかには、年数が経てば価値が下がってくるものもあります。
設備や機械など、時間と同時に価値が下がる資産を取得した場合、使用可能期間で分割して費用を計上しなければなりません。取得した年に一度に計上できない決まりです。
分割して計上することを減価償却、分割して計上された費用を減価償却費と言います。
EBITDAと営業利益の違いは「減価償却費」にあります。営業利益の求め方をもう一度確認してみましょう。
営業利益=売上高-売上原価-販売費及び一般管理費
ここで注目したいのが、計算項目にある「販売費及び一般管理費」に減価償却費が含まれていることです。
減価償却費は分割して計上されますので、経費として計上されていても、その年に支払った金額とは限りません。
その年に現金支出を伴っていない場合もあります。
EBITDAでは、減価償却費を営業利益に戻します。
現金支出を伴わない減価償却費を戻すことで、キャッシュのフローだけの利益がわかるのがEBITDAの特徴です。
EBITDAと似た指標として、EBIT(イービット)と呼ばれるものもあります。
EBITは、最終的な利益に利息(支払利息-受取利息)と税金を足したもので、事業活動から生じる利益に着目した指標と言えます。
借入コストの影響を除いた利益を分析するときには、主にこちらの指標を用いられます。
減価償却費が含まれていることが、EBITDAとの大きな違いでしょう。
借入金の影響を取り除いた利益を出すときに、多く使用される傾向にあります。
EBITDAを使用するメリットとして、次の点があげられます。
EBITDAを使用するメリットとして、シンプルな計算式で企業価値がわかることがあげられます。
EBITDAには、先に紹介した計算式のように簡単に求められる方法があります。
また、EBITDAの計算に必要な項目は財務諸表に載っているため、財務諸表さえあれば簡単に企業価値を評価できます。
企業が事業を拡大させるときは、どうしても借入金が大きくなるものです。
また、スタートアップ企業や成長期の企業も借入金が大きくなる傾向にあり、多額の資金調達コストから利益が小さく見えてしまうことがあります。
EBITDAを使用すれば、こういった借入金による利益の目減りを排除したうえで企業を評価することができます。
M&Aで複数の案件がある場合でも、借入金の影響を受けずに、企業の本来の収益性を比較して検討することができるでしょう。
税の影響も受けないため、海外の企業も公平に比較することが可能です。
国が変われば会計基準も変わってきます。
同じ資産を持っていても、減価償却している国もあれば減価償却しない国もでてきます。
そうなれば減価償却が求められる国は、どうしても償却費の分だけ営業利益が小さくなてしまいますが、減価償却費を差し引く前のEBITDAなら、会計基準の違いに関係なく、異なる国の企業を比較することができます。
また、企業によって設備投資額は年度ごとに変わってきます。設備投資額が多い年度もあれば少ない年度もあります。
EBITDAは設備投資の波の影響を受けないため、長期的な視点で平等に企業を評価することができます。
減価償却費の求め方には、定額法と定率法の2種類があります。
定額法は毎年同じ金額で減価償却する方法で、定率法は年々下がってくる残りの資産価値に対して一定の割合で減価償却する方法です。
どちらで減価償却しているかで数字が変わってしまいますが、EBITDAなら償却方法の違いを排除して企業を比較できます。
EBITDAを使用する場合、デメリットも存在しますので、確認しておきましょう。
設備投資は、投資した金額以上のリターンがなければ、過剰な設備投資として損失になります。
EBITDAでは、その損失を知ることはできません。
設備投資は必ずしも利益になるとは限りませんので、注意が必要です。
EBITDAは計算も簡単である一方で、厳密な指標ではないことに注意しなければなりません。
厳密なキャッシュフローは、設備投資など事業活動に必要な資金を細かく見ていく必要があります。
EBITDAだけで企業価値を判断するのではなく、営業利益やフリーキャッシュフローなど、さまざまな指標を合わせて分析することをおすすめします。
M&Aで企業を買収する場合は、相手企業の支払利息も負担することになり、支払利息について考慮しなければなりません。
EBITDAには支払利息が反映されていないため、M&AでEBITDAを使用する場合は注意が必要です。
また、企業は法人税を支払う必要がありますが、企業のキャッシュフローは、税金などの必要な資金を踏まえて初めて正確にわかります。
EBITDAは支払利息や税金などの資金が考慮されていないため、正確な企業価値がわかりづらいデメリットがあります。
フリーキャッシュフロー(FCF)とは、本業で稼いだキャッシュフローから事業に必要な資金を引いたものを指します。
運転資金や設備投資など、必要な資金を確保したあとのもので、株主に自由に分配することが可能です。
企業存続のためには、運転資金や設備投資に現金を投入したり、税金を納めなくてはなりませんが、これらは現金による支払いとなります。
EBITDAには、これら事業活動に必要な資金は考慮されていません。
「EBITDAとフリーキャッシュフローは違う」という点に注意してください。
EBITDAは企業の本来の稼ぐ力を知るうえで有用な指標です。
分析・比較に適していますので、経営はもちろん、M&Aを行う場合にも参考にすることをおすすめします。
ただし、デメリットもあるため、ほかの指標と組み合わせて判断してください。
M&Aでは何より正確な企業評価が必要です。
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この記事の監修M&Aアドバイザー 西井 康輔
税理士法人Bricks&UKにて、会社設立や創業融資などスタートアップの支援を数多く担当。
M&A Stationでは総合的なM&Aのサポートに従事。
業種を問わず幅広くM&A戦略の策定、事業承継についてアドバイスを行っている。
M&A Stationでは、豊富な案件からスムーズなマッチングを実現。
効率的な資金調達や、財務・税務・ビジネス・法務・人事、あらゆるDD(デューデリジェンス)を自社内で一括で行うなど、 買収や合併後、制度面や業務面でのスピーディな統合を実現し、シナジー効果の獲得に直結するM&Aを支援いたします。
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