【資金調達】M&Aで銀行はここを見る
2021.4.23
2021.4.23
事業を買収する際の必要資金の資金調達方法はいろいろありますが、やはり一番身近な手段は銀行借入によるものと言えるでしょう。
そしてこれは、逆説的に言うと銀行が融資を断るようなM&Aの場合は定量的に見て何かが足りず、銀行が貸付金を回収できないリスクを感じている客観的な警告と言えます。
もちろんその代表的な例は信用力であり、決算書の内容や銀行取引の実績は大いに参考にされるでしょう。
買収計画、キャッシュフロー計画、自社の財務健全性、経営者の経営能力や経営戦略、買収対象事業の内容など銀行が事業買収の際に重視する項目は多岐にわたります。
Contents
まずは、M&Aで資金調達が必要な理由を説明していきます。
おもに次の理由があげられます。
M&Aを行おうとして、売り手企業が見つかったとしても、「そもそも買収するための資金が足りない」という場合もあります。
せっかく会社が成長できるような売り手企業があるにもかかわらず、資金不足のために諦めるのは悔しいものです。
買収するための資金が不足している場合、買収資金の調達が必要になってくるでしょう。
中小企業のM&Aでは、対価が現金であることが一般的です。
また、規模の大きいM&Aになると、買収するために数百万円から数億円の資金が必要になるケースも少なくありません。
対価が現金の場合や、金額の大きいM&Aでは、資金の調達が必要になるケースが多くなります。
M&Aでは、さまざまな諸経費が必要になることも知っておいてください。
直接的な買収費用以外にも、仲介手数料や税金、株券発行費などがこれに当たります。
また、M&Aの方法によっては登記手続きが必要になる場合もありますので、その場合は費用を用意しなくてはなりません。
さらに、M&Aで事業承継する場合、株主総会の開催が必要になります。
開催にあたっての会場費や交通費などの費用も必要です。
M&Aで会社を買収すると、相続税が必要になります。
相続税の支払いも必要な資金調達の理由のひとつとして考えておきましょう。
大規模なM&Aほど相続税は高くなります。
会社の引き渡しのときに相続税は支払いますので、「M&Aは成立したけれど相続税が払えない」ということの無いように準備が必要です。
M&A行う場合、買い手側の企業は、売り手側の企業の財務や法務などについて調査をする、「デューデリジェンス」を行います。
デューデリジェンスは、弁護士や公認会計士などの専門家に依頼することが一般的ですので、別途費用が必要な上、専門的な知識が必要になるので費用も高額になることが考えられます。
また、M&Aが成立した場合にはM&A仲介会社への成功報酬も必要です。
M&A仲介会社への報酬体系はさまざまですので、契約時にどのくらいの金額になるか確認しておくようにしてください。
M&Aの資金調達の方法として、「金融機関からの借入」があげられます。
融資で調達すると、どのようなメリットがあるでしょうか。
まず、持ち株比率の希薄化を防げることがメリットです。
金融機関からの借入で資金調達する方法を「間接金融」と言いますが、「直接金融」という方法もあります。
直接金融には、以下のものがあげられます。
公募増資 | 幅広く一般の投資家に新株を発行することで資金を調達する |
株主割当増資 | 既存の株主に対して新株を発行することで資金を調達する |
第三者割当増資 | 既存の株主以外の第三者から、特定の人に新株を発行することで資金を調達する |
直接金融の場合、新株を発行することから、既存の株主の持ち株比率が減ることになります。
金融機関からの借入では、既存の株主の持ち株比率が減ることはなく、株主の構成も変わらないため会社への影響も少なくなります。
オーナー経営者の持株比率が希薄化し、経営への影響力が弱まることを防ぐことが可能です。
内部留保など、手元に資金がなくてもM&Aを実施できるのは大きなメリットと言えます。
手元の資金が貯まるまで待たず投資実行することで、より短期間で会社を成長させることが出来ます。
「時間をお金で買う」という意味でも、金融機関からの借入による資金調達は効率的だと言えます。
会社の信用力が高いほど、金利など融資の条件は有利になります。
信用力は、社歴、経営者、従業員、会社規模、技術力、ブランド、財務状況、取引先、市場優位性などから総合的に判断されます。
会社規模が大きい、財務状況が良好、など信用力を得られる要素があれば、より低金利で借り入れを行うことができるでしょう。
また一般的には、直接金融と比較して融資の方が基本コストが低いとされています。
次に、借入で資金調達をする際のデメリットも説明します。
デメリットも知った上で、自社にとって一番良い資金調達の方法を考えていってください。
融資を受けられる金額には、会社の信用力に応じた限度があります。
既に借りている金額を返済しないと、追加融資が受けられない可能性もあるので注意が必要です。
いざというときを考えて、金融機関からの借り入れ後は、余裕のある経営を行うことが重要です。
当然ですが金融機関から借入を行った場合、返済義務が発生します。
場合によっては、思ったよりもM&Aの効果が生まれず利益が出ない場合も考えられます。
M&Aによって、行った投資が何年間で回収できるかを計算し、事前に返済計画を綿密に立てておかなければなりません。
中小企業が借入を行う場合、経営者が連帯保証人に入るように求められるケースがあります。
もし経営が上手くいかずに会社が倒産したら、経営者に債務が残ることになり、経営者自身が返していかなければなりません。
経営者の生活に大きな影響が出ないよう、リスクの高い借入は回避するべきでしょう。
それでは、銀行も安心して融資を実行できるようなM&Aとはどのようなもので、経営者はどのようなことに気をつけてM&Aに取り組まなければならないのでしょうか?
一般的に事業を買収するにあたり銀行が一番に確認するものは、もちろん損益とキャッシュフローの状況です。
これは買収の対象となる企業の経営状況はもちろんのこと、買収をしようとする会社についても同様に厳しく経営状態を精査され、特に財務や経理の計数管理能力を慎重に見極めようとすることに留意する必要があります。
M&Aにより企業を買収し、そのキャッシュフロー管理や財務内容のコントロールに複雑さが増す以上、当然求められる能力と言えます。
その一方で事業の買収にあたり、銀行に対して突然融資を申し入れても融資審査を通るのは容易ではありません。
地域の商工会議所や地方公共団体の行っている経営相談を利用し、制度融資が利用できる要件を整えている場合などは信用保証協会から直接融資の保証が下りますのでこの限りではありませんが、これら融資の取り付けも段取りと信用の積み重ねが重要になると言えるでしょう。
また金融機関の斡旋するM&Aの場合、売却相談を受けた企業や事業を、銀行自身が適切と判断する経営者に対して買収の斡旋を行うために融資の取り付けまでは最短距離と言えます。
M&Aの間を取り持ち買収側には融資、売却側には資産運用で貢献することも銀行の大事な仕事なので、買収の斡旋をする頃には信用保証協会の与信枠まで調べていることもあり、手続きは比較的早く進む可能性があります。
いずれの場合でも、取引銀行の営業担当に対してM&Aを活用する意志があることを伝えておくことが事業買収成功の第一歩になるので、普段から積極的なコミュニケーションを心掛けておくと良いでしょう。
事業の買収に対する融資は、買収対象の案件にその価値があることが大前提になります。
通常、銀行融資では原則として、1億円の価値がある事業に1億円の融資をすることがあっても2億円を融資することはありません。
では銀行にとって事業の価値として判断されるものは何なのか、ということになりますが、やはりわかり易い有形固定資産が一番評価をつけ易く、評価が難しい特許や権利などの無形固定資産は評価の対象になりにくいと言えます。
有形固定資産の中でも土地や建物を保有するM&A物件の場合、銀行もM&Aに取り組みやすく、その現在価値も明確で周辺の土地の流動性も高い場合には、比較的容易に融資の降りる可能性が高くなります。
わかり易い有形固定資産があり、流動性が高くすなわち換金性が高い物件の場合、融資の対象が合理的に説明しやすいということがポイントです。
逆に言うと、事業の買収で融資を通しやすくするためには、融資の対象を明白でわかりやすい構図にしなければならず、わかりにくい資産内容であればわかるように詳細説明できる説得力が必要になります。
無形資産が中心の事業の買収の場合、特にこの説得力が問われることになると言えるでしょう。
M&Aにあたり銀行がもっとも注意深く見る注意点の一つに「のれん代」があります。
のれん代とは、対象となる会社の純資産が仮に1億円であった場合で買収価額が2億円になった場合にその差額の1億円分を指す言葉で、資産の裏受けがない買収価額の評価ということになります。
一般にのれん代が発生するケースとしては、キャッシュフローを潤沢に生み出す会社で純資産以上の収益をあげられることが確実な場合や、販路や技術に特別な価値がある場合、特別な営業許可などの認可を受けている場合などが考えられますがこれらに限られるものではありません。
わかりやすく言えば、バランスシートに記載できないものの確実に価値がある「何か」に対する評価と言えるでしょう。
しかしながらこののれん代は、いわば売却側か買収側で価値があると評価しているだけで、客観的な裏付けがあるわけではない場合も珍しくありません。
また過剰評価なこともあり、その妥当性については極めて判断が難しいことも多くあるといえるでしょう。
このような場合、買収額を満額融資で賄おうとすれば買収する事業を活用しどのような付加価値をどれほど生み出すことができるのか。その経営計画について具体的で説得力のある見通しと説明を求められることになるでしょう。
また銀行が一番嫌い警戒するのは、意図的なのれん代のかさ増しです。
M&Aは大きな金額が動く取引であり、大きな金額が動く際には思わぬ悪意を持って融資を利用しようとする試みが皆無ではありません。
のれん代として融資額をかさ増しし、引き出した融資を何らかの形で迂回し目的外の取引に使用しようとすることも、悪意があれば不可能とは言えないでしょう。
銀行はその業務の性質上悪意のある試みに敏感で、基本的にわかりにくい説明や構図は理解しようとしないと考えるくらいでちょうど良いと言えます。
銀行が融資の決裁を降ろさなかったM&Aには客観的な説得力に欠ける何かがあったと考え、スキーム全体を構成し直すことも勇気ある一つの決断と言えるでしょう。
ここまでM&Aで資金調達が必要な理由や、金融機関で借入を行う際のメリット・デメリットについて説明してきました。
メリット・デメリットを踏まえ、「銀行からの融資で資金調達をする」と決めた場合、どのような点に気を付ければ融資が成功するでしょうか。
融資での資金調達で注意するべきポイントを解説します。
借入先銀行との取引履歴を重ねていくことで、信用を得ることができます。
給与の支払いなど通常の取引で多く使っている銀行の場合、銀行に対して高い手数料を払っていることになり、優良顧客として見てもらうことが出来ます。
取引履歴を積むことで、借入の条件も変わってきます。
借入れやすさにも違いがでてくるでしょう。
会社としての信用力が高いほど借入がしやすくなっています。
信用力をあげるためには、財務状況をしっかりと管理しておくことが重要です。
なお、設立したばかりの会社は、まだ信用力が低いことが一般的です。
大手銀行は信用力を重視する傾向にありますので、会社を設立したばかりの場合は、信用金庫や地方銀行をおすすめします。
事業計画書とは、現在の事業やサービス内容、経営方針、売上の予測などをまとめた資料で、融資を受ける場合、必要になる書類です。
銀行での借入には、財務諸表に加えて、事業計画書などの書類が必要です。売上や経費などの実際の数値を元にしっかりと作り込みましょう。
作成に際して不安があれば、税理士やコンサルタント、M&Aアドバイザーなどの専門家に見てもらうこともおすすめです。
さらに、書類について銀行から聞かれる可能性もあるため、作るだけでなく、書類の説明ができるようにしておくことも必要です。
借りた資金を何に使うかなど、きちんと説明ができないと信頼をなくしてしまいます。
あらかじめ綿密な準備をしておいてください。
中小企業のM&Aでは、多くは「株式譲渡」または「事業譲渡」により実施されます。
M&Aで必要な資金というと、株式・事業譲渡の対価のための資金が頭に浮かびますが、実際にはM&Aを行う際に必要な資金は多岐に渡ります。
【M&Aで必要になる費用】
買い手側はもちろん、意外に見落としがちですが売り手側に費用が発生する場合もあります。
近年は中小企業の事業承継の必要性から、M&Aや資金調達の動きが活発になっています。
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