「ROI」「ROA」とは何?それぞれの違いについて解説
2021.8.12
2021.8.12
ROIやROAという言葉を聞いたことはありますか?
これらはM&Aだけでなく様々なビジネスの場で使用される機会が多く、意味はもちろん、活用方法をしっかり知っておきたい指標です。
M&Aの際にはROIやROAなどの指標を用いて、案件に対する投資効率を評価したり投資対象である企業の収益性を測定したりすることに活用しています。
本記事では、ROIやROAの概要や算出方法、各指標の数値分析によって判明すること、などについて詳しく説明します。
Contents
ROIとは「Return On Investment」の略称で、日本では投下資本利益率や投資利益率などと呼ばれており、その投資によってどれだけの利益を上げることができたのかという投資効率を表す指標のことを指しています。
計算したROIの数値が高ければ高いほど、効率的に(上手に)投資ができていると言うことができます。
ROIは以下の計算式で求めることが可能です。
この式の「売上―売上原価―投資額)は、「利益」と置き換えることも可能です。
言い換えると、「利益」を「投資額」で割ることでROIを算出することができるのです。
したがって、投資額よりも利益が小さい場合にはROIは100%を割り込んでしまうので、ビジネスとしては赤字に終わる投資になってしまうことがわかるでしょう。
上記の式を見ればROIの数値を向上させるためには、収益をアップするか投資額を減らすか、のどちらかの方法しかないことに気が付くと思われます。
もう少し詳しく分析すると、収益をアップするためには売上を増やすかコスト(売上原価など)を減らすことによってROIは向上します。
一方で、投資額を減らすことで確かに計算上はROIがアップしますが、一般的には投資額が少なくなればROIが向上することはあっても利益の絶対額も少なくなってしまう可能性が高いと考えられます。
したがって、ROIの向上には売上(収益)のアップが最も有効な手段であると考えられます。
ROIには、規模や事業種類が異っているような企業の間であっても比較することが容易に可能になる、という特徴があります。
企業は、自社が運営している様々な事業に対して、どの事業にどのくらいの投資をするべきか、を必ず検討しています。
そうした場合に考え方のベースになる指標がROIになります。
基本的には、ROIが高い、つまり投資効率が優れているような事業に集中して投資することが将来の会社の発展へと繋がると考えられるのです。
つまり、複数の事業を営んでいるような企業において投資金額を効率よく回収することが可能な部門はどこなのか、を見極めることができる指標がROIなのです。
なお、ROIの基本的な目安は業種やそれぞれの企業の経営方針などによって異なりますが、一般的には、飲食業などではROIが高くなり、小売業などでは低くなる、という傾向があります。
ROIは、投資した金額に対してどのくらいの利益が出ているのか、を知りたいようなケースでも利用することができます。
つまり、実際に投資金額を元手に運営されている事業がどれだけの収益を挙げることができたのか、を正確に見極めることができる指標になると言えるのです。
また、案件の成否に関する判断基準としても利用可能です。
一般的には、M&Aを実施するようなケースでは、一定のリスクを引き受けて手間やコストをかけて投資を実行することになるので、投資から生じる期待利益に対してはミニマム(最低水準)の基準を設定しています。
具体的には、M&Aの実施には投資対象のROIがミニマム20%以上となることを条件とする、というような投資の基準を設定するケースが考えられます。
いくつかの選択肢の中から選び抜いた案件の場合であっても、こうしたROI基準を超えられなければ投資対象としては不適切な案件であり投資は実行しない、という使い方をするのです。
M&Aにおいては投下資金をどのくらいの期間で回収することができるのか、という判断基準も重要になります。
つまり、ROIの投資効率とは、投資した金額に対する利益率、としての意味だけではなくて、回収期間としての意味合いも重要になるのです。
投資した資金を短い期間で回収することが可能であれば、仮に投資が失敗してしまって投資資金を回収することができなくなってしまうようなリスクを軽減することも可能になるでしょう。
また、新たな別のM&A案件への投資を実行することも可能になります。
高いROIを持つ案件=投資効率が高い案件、ということは、投資回収期間も短くなる、ということを意味しているので、より投資しやすいという判断に繋がることになります。
ROAとは「Return On Assets」の略称で、日本では総資本利益率や総資産利益率と呼ばれており、企業が、投下された総資本をどのように効率的に利用して利益を生み出しているか、を示す指標のことで、M&Aでは企業の収益性を測定する指標として活用されています。
ROAは以下の計算式で求めることが可能です。
この式の当期純利益には、営業利益、経常利益、事業利益、などを使う場合もありますが、企業のビジネスモデルそのものの収益性を見るためには、企業の最終利益である当期純利益がより適していると考えられます。
ROAの高い企業は優良企業だと一般的には言われていて、効率的に利益を獲得できている企業だとされていますが、実際にはROAが高くても重い負債に苦しんでいるような企業はたくさん存在しています。
つまり、M&Aなどの投資を実行する場合には、ROAのみならず、他の様々な指標も利用して安全性を確認することををおすすめします。
上記の式を見ればROAの数値を向上させるためには、収益をアップするか総資産を減らすか、のどちらかの方法しかないことに気が付くでしょう。
もう少し詳しく分析すると、総資産を減らすためには資産を減らす(例えば、固定資産を売却する、など)か負債を減らす(例えば、借入金を返済する、など)ことでROAは向上しますが、必要な資産や負債までをも削減しないように注意することが必要です。
一方で、ROIの場合と同様に、売上アップやコスト削減もROA向上には有効だと考えられます。
ROAとは、会社の総資産をどれだけ効率的に利用して収益を得ているかを示す指標です。
総資産とは投資家から出資してもらった自己資本(資本金など)と銀行などから借り入れた他人資本(借入金など)を利用することによって保有している会社財産の総額のことですが、それらの総資産を上手に活用するか、それとも儲からないビジネスに無駄な金をバラまいているのか、を客観的に判断することができる指標がROAであり、言い換えれば会社における事業経営の巧拙が明確に判明してしまう指標でもあります。
利益が増加すればROAは向上し総資産が増加すればROAは低下します。
つまり、少ない総資産で多額の利益を生み出す企業がROAの高い企業、つまり経営効率が良好な企業であると判断されるのです。
ROAを向上させるにはなるべく無駄な資産を減らしつつ利益率を上げていくことが必要であると共に、投入資産と獲得利益のバランスをちゃんとコントロールすることも必要です。
一般的には、ROAが5%以上である会社は優良な企業である、と言われています。
しかし、現実には高いROAの会社であっても、負債の負担が重くて日常的に返済のプレッシャーから逃れることができずに自転車操業をしているような企業も少なくはありません。
経営状況が火の車なので、結果的にコストを限界レベルまで削減することで、高いROAになっているような可能性も考えられます。
したがって、ROAが高い=優良企業、ということは鵜呑みにはしないで、流動比率、当座比率、などの他の指標もいっしょに分析するようにしましょう。
流動比率とは、1年以内に現金化される売掛金、受取手形、短期貸付金資産、などの流動資産と1年以内に支払期限が到来する買掛金、支払手形、短期借入金、などの流動負債を計算した指標で、
という計算式で求められます。
また、当座比率とは当座資産と流動負債から企業の支払能力を計算した指標で、
という計算式で求められます。
なお、当座資産とは、流動資産の中で、「現金」あるいは「短期間で容易に現金化できる資産」のことを言い、勘定科目としては、現金、普通預金、売掛金、受取手形、営業債権、未収金、売買目的の有価証券、1年以内に回収予定の債権、などが対象になります。
ROAに関して注意すべき点は、ビジネスを拡大して利益を増やすために借入金を利用して先行的に投資を実行した企業のROAは一時的には悪化してしまう可能性が高い、ということ点です。
運輸業、小売業、レジャー業、といったビジネスを拡大・テコ入れするために多額の設備投資が必要になる業種のような場合には、先行投資を実行すると固定資産が急激に増加することになります。
自社で保有している手元キャッシュを利用すれば総資産が増えることはありませんが、借入金などで資金を調達した場合には総資産が増加してしまいます。
一方で、設備が順調に稼働して利益を生むとしても、借入金を返済するまでにはタイムラグが生じてしまいます。
つまり、先行投資はテンポラリーな総資産の増加と利益の減少の原因になるので、ROAは悪化してしまいます。
しかし、将来的には先行投資はROAのアップに繋がる施策であると言えるので、上記のような原因でROA一時的に悪化している企業を、他社との比較上で経営効率が悪い、と判断することは正しくはないでしょう。
M&Aでは、買収対象企業のROIやROAを秘密保持契約の締結~最終契約書の締結の間のタイミングでしっかりと把握しておくことが重要です。
しかし、より重要なことは直近期の数字だけでなく過去数期にわたってROIやROAの数値がどのような変化を見せてきたのかを確認することです。
これらの指標が大きく変動しているような場合には、その期にどのようなことが原因で指標が変わったのか、という理由を把握することが必要になります。
前述したように、前向きな事業戦略を実行するための先行投資のような場合には、その結果や現状について確認することになります。
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