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正しいM&Aアドバイザーの選び方

M&Aアドバイザーが取引の中で果たすべき役割についてご説明してきましたが、M&Aアドバイザーの力量はやはり様々です。
特にスモールM&Aはここ10年ほどで仲介事業者が数を増やしており、経営コンサルタント事業から独立したアドバイザーや大手M&A仲介専業から独立したアドバイザーなど、得意とする分野や経験値も非常に大きな幅があるといえるでしょう。

では中小・中堅企業の経営者がM&Aを活用したいと考えた場合、どのような観点で仲介事業者を選べば良いのでしょうか。

取引の規模に応じた経験値

M&Aアドバイザーを見極める上で、最初に重要になるのは取引の規模に応じた経験値を有しているか、また熱心に取り扱う意志があるかと言えるでしょう。

M&A専業の大手は数億円以下の取引を扱うことはなく、スモールM&Aをメインにする仲介事業者であれば5億円を超えてくるような取引の取扱いはやはり経験不足と考えられます。
その仲介事業者がどのあたりの取引を想定し取り組んでいるかは、Webサイトなどで掲載されている報酬額を見ることでおおよその検討をつけることができます。

一般にM&A仲介の成功報酬はリーマン方式と呼ばれており、例えば1億円の取引を例に取ると、

3,000万円以下の部分…10%
3,000万円超5000万円以下の部分…7%
5,000万円超1億円以下の部分…3%
1億円超3億円以下の部分…2%
3億円超の部分…1%

といった表記がある場合、

3,000万円以下の部分に対する報酬…300万円
5,000万円以下の部分に対する報酬…140万円
1億円以下の部分に対する報酬…150万円

合計590万円と計算されることになります。

この事業者のような例の場合、3000万円以下の取引を設定し、また1億円以下を細かく刻んでいるため、このレンジのスモールM&Aを特に手掛けることを想定していると考えられます。

一方でM&A仲介専業の大手、R社の場合成功報酬の刻み方は

5億円以下の部分…5% から始まり
100億円超の部分…1%

と段階が設定されています。

このような場合、スモールM&Aの仲介を依頼するにはややレンジが違うと考えて差し支えないでしょう。
自社のレンジに合う会社で、かつそのレンジでの取り扱い実績が豊富なことが、最初に見るべきポイントと言えます。

経営の母体と取引への取り組み姿勢

取引の規模が自社の案件に合うと考えられる場合、次に考えるべきはM&Aアドバイザーの経営母体です。
多くの場合、スモールM&Aのアドバイザーは同業他社で経験を積むか、経営コンサルタントや税理士事務所などから独立していることが多く、その経営の母体や取引に取り組む姿勢も様々です。

そして、これら出身母体による違いは顧客との距離感に現れることが多いと言えるでしょう。
これはあくまで一般論としての傾向であり、当てはまらない例も多々ありますが、独立系やM&Aの仲介を専業にしている会社の場合、買収する側の企業と取引を繰り返し、買収側を顧客としていることが多くあります。

売却側とはM&A以前に取引はなく、そしてM&A後にも取引はありません。
案件として持ち込まれた、あるいは金融機関から打診を受け初めて接触する企業の売却を手掛ける事になる一方、買収側とは繰り返しの付き合いがあることが多いので、売却側の経営者にとっては非常にタフな状況となることも多くあります。

一方で、経営コンサルタントや税理士事務所などから派生したスモールM&Aアドバイザーの場合、買収側・売却側ともにそれ以前からの取引がある事が多いと言えます。
また取引がない場合でも、狭い地域の中で本業を営んでいる事が多いため、持ち込まれた案件にも慎重に対応することが多いと言えるでしょう。

程度の問題もあり、いずれの姿勢にも長所・短所があるので一概にM&Aアドバイザーの質に直結するというものではありません
売却側・買収側それぞれで、その時にM&Aアドバイザーに対して求めていることから考えて、最良の選択をすると良いでしょう。

経営方針と総合力

M&Aアドバイザーを選ぶ上で、とりわけスモールM&Aの場合にはもっとも重視するべき項目といえるのが、この経営方針と総合力と言えるでしょう。
簡単に言うと、M&Aを手段の一つとして持ち合わせているか、それともM&Aを目標としているかによる違いといえます。

M&Aはある意味で究極の選択肢です。
売却側にとっては特にその意味合いが強いものですが、あくまでもその局面においてもっとも有効であると考えられる場合に限り採るべき手段と言えるでしょう。
売却側の場合、売却までに財務面や税務面の整理、あるいは組織の再編などを通じて更に事業価値を高めてからM&Aに取り組んでも遅くなければ、そのようにするべきです。

買収側の場合、直ちに全株式の取得をするのかそれとも事業の一部譲渡で受けるべきなのか、あるいは段階的な出資を通じてもっともコストパフォーマンスが良い方法を模索するのか、M&Aは手段の一つでしかなく、財務面や税務面、あるいはM&Aに取り組む情勢などを理解しながらもっとも望ましいタイミングで実行することを顧客に提案するのが、M&Aアドバイザーに本来求められるべき姿勢であると言えます。

このような提案ができるのは、経営者の要望に多くの面で応えることができる、総合力のあるM&Aアドバイザーのグループのみと言えるでしょう。
時に毎月の月次決算の記帳からお付き合いが始まり、多くの年月を共にしてきた経営者に一番近いところで取引に寄り添えるのも、税理士事務所を母体とするM&Aアドバイザーの特徴と言えます。

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